デューデリジェンスとは? CVCのスタートアップ投資でのポイント

投資後に思いもよらないリスクを負わないために、投資先の企業や事業について調査を行う「デューデリジェンス」が欠かせません。デューデリジェンスの流れや特にCVC投資におけるポイントを紹介します。

デューデリジェンスとは

デューデリジェンス(Due Deligence)とは、一般的に企業の買収や事業投資を行う際に、将来的にリスクとなり得る事項をあらかじめ把握し、適切な買収、投資判断を下すために、対象企業や事業の実態を調査することを指します。

投資を行う会社内に限らず、事前に弁護士や会計士といった専門家に依頼し、評価してもらうことも少なくありません。

この記事では、とりわけCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)が投資判断を行う際のデューデリジェンスについて検討しました。

 

投資プロセスにおけるデューデリジェンス

CVCによるスタートアップ投資の大まかな流れは次の通りです(以下に示したのは、投資先の発掘を終えた後の流れです)。

  1. NDA(秘密保持契約)の締結
  2. タームシートの作成
  3. デューデリジェンス
  4. 投資契約の締結
  5. 投資の実行

最終的な投資判断を行うにあたっては、対象企業から重要な情報の開示を受ける必要があるため、まずはNDAを締結し、その後に契約の基本的な内容をまとめたタームシートを作成します。契約内容は早いタイミングで大筋の合意を取ることで、この後の契約締結をスムーズに進めるのに役立ちます。

その後にデューデリジェンスを行い、問題がなければ投資契約の締結へと進んでいきます。

では、次にデューデリジェンス の流れをより細かく見ていきましょう。

細かい点は案件によって異なりますが、主に次のようなプロセスで進めていきます。

  1. デューデリジェンスを実行する調査チームをつくる
    • 社内の担当者や専門部署のほか、弁護士や税理士といった社外の専門家がチームに加わることもあります。
  2. デューデリジェンス の方針、実施内容(スコープ)の決定
    • 一連の投資プロセスの中でデューデリジェンスにかけられる時間はおよそ1ヶ月から、長くても2ヶ月程度の場合が多いです。後述するように、デューデリジェンス の範囲は多岐にわたるため、あらかじめ予算や重視する項目などを決めておきます。
  3. 情報の確認、必要な資料の請求
    • 対象企業から開示を受けた情報をチームで確認します。それに加えて、2で決めた方針に従って必要な書類をリストアップし、対象企業から提出してもらいます。
  4. ヒアリング(Q&A)
    • 3に加えて、実際に対象企業の経営陣などへのヒアリング調査を行います。また、対象企業に対してすでに投資を行なっている企業へのヒアリングも有効です。
  5. 対応の決定
    • こうした情報をもとに、投資プロセスを進めるかどうかを検討します。

 

財務、法務、ITなどデューデリジェンスの種類は多岐にわたる

では、ここからは具体的にデューデリジェンスの内容を見ていきましょう。

ひとくちにデューデリジェンスといっても、その種類はさまざまです。主なデューデリジェンスとしていくつかの例を紹介します。

事業(ビジネス)デューデリジェンス

対象企業の事業に関するデューデリジェンスです。ビジネスモデルのほか、競合他社や新規参入の状況など市場環境に関しても分析、評価します。

特にCVCにおけるスタートアップ投資の場合には、投資を通じてその市場についての理解を深めていくことを狙いとするケースも多いため、投資先が参入しようとする市場に関する調査も重要です。

財務デューデリジェンス、税務デューデリジェンス

対象企業の財務・税務情報を評価して、隠れたリスクがないか、将来的な損益やキャッシュフローの予測などを行います。

法務デューデリジェンス

投資プロセスや、対象企業の価値算定、将来的な事業計画や経営に影響し得る法律上の問題点を把握します。

特にリソースが限られているスタートアップの場合、法務に関する専門部署が設置されていなかったり、整備できていなかったりするケースが少なくありません。例えば特許に関して、スタートアップが製品にかかる特許を取得しているか、あるいはその製品が他社の特許を侵害していないか、といった問題点をデューデリジェンスによって確認しておくことで、投資後の法務リスクを避けられます。

その他、対象企業のIT資産の価値算定やITシステムに関する問題点がないかを確認する場合もあります。

 

スタートアップへのCVC投資におけるデューデリジェンスのポイント

さて、では最後にCVCがスタートアップへ投資を行う場合のデューデリジェンスについて、ポイントを整理します。

自社の事業や戦略との相性はどうか

CVC投資の場合、金銭的なリターンのみならず、戦略的リターンを目的とした場合もあります。そのため自社の事業や戦略との相性はどうか、といった点は重要なポイントです。

またCVC投資を入り口として、将来的なM&Aやジョイントベンチャーの設立を目指すケースもあります。その場合には、既存の株主構成などについても、あらかじめ目を向けておくことが重要です。

先に投資している他社にヒアリングする

デューデリジェンスのプロセスにおいて、投資対象の企業の話を聞くことはもちろん重要ですが、前述した通り、先にその企業へ投資をしている株主の話を聞くこともCVC投資において一般的に多くの企業で行われています。

他社からの意見や視点を踏まえて検討することで視野が広がり、新たな論点の発掘にもつながる可能性があります。

リードVCの投資内容を確認

事業会社が投資を行うケースでは、事業会社とは別にリードVCが存在していることがあります。リードVCとは、投資ラウンドを主導する役割を担うVCのことです。投資先の企業との間でバリュエーションなどの投資条件を決めたり、実行までのスケジュールを設定したりします。

リードVCが別に存在する場合は特に、デューデリジェンスの遅れで、他社の投資スケジュールに影響を与えることがないよう、スピード感が重要です。

 

上記に挙げたデューデリジェンスのポイントは一例ですが、
TOPPAN CVCでも幅広く投資実行・新事業を一緒に創っていく手法を日々ディスカッションしておりますので、興味がある方は以下からお問い合わせください。