ソーシングとは?ーCVC投資、調達の際の注意点

CVC投資を成功させるには、良いソーシングを行う必要があります。そこで今回は、VC/CVCが投資先候補を探す際のソーシング手段としてどのような種類があるのか、またその中でも事業会社やCVCが良いソーシングをするためのポイントについて触れていきます。

ソーシングとは

スタートアップ投資におけるソーシングとは、投資先企業を探す行為を指します。ソーシングは、スタートアップ投資における最初のプロセスであり、投資家が良い投資を行う上で重要な役割を担っています。

ソーシングは、単に投資先候補を探すだけではなく、デューデリジェンスの手前までのプロセスを含むこともあります。デューデリジェンスとは、投資対象の企業や価値、リスクなどを調査することです。ソーシングを、デューデリジェンス手前までのプロセスまで含むものと定義した場合、以下の段階を経て進めていきます。(参考記事:ディーデリジェンスのポイント

  1. 探索:投資先候補を探す
  2. 選定:見つけた投資先候補のなかから実際に投資したいスタートアップを選ぶ
  3. 接触:選んだ投資先候補とコンタクトをとる
  4. 初期検討:投資先候補との投資条件等のすり合わせを行う

ソーシングの主な手法

ソーシングの主な手法は、以下の6つです。

  1. ニュース・プレスリリース
  2. データベース(DB)
  3. イベント・展示会
  4. アクセラレータープログラム
  5. 大学・研究機関(ラボラトリ)
  6. VCへのLP出資

それぞれ異なるメリットがあるため、自社の状況に適したものを選ぶことが重要です。

ニュース・プレスリリース

各社のニュースリリースや、ニュースサイトなどのメディアを活用することで、スタートアップに関する最新情報を閲覧できます。スタートアップに関する最新情報を得ることで、より適切な投資判断をしやすくなります。

メディアの強みは、速報性です。他のソーシング手法よりも、比較的早くスタートアップに関する最新情報を把握できます。また、可読性に長けている点もメリットです。

このようなメディアの例として、個別企業や政府系機関などの組織が、登録者のみにメールで提供するメルマガ形式のニュースレターがあります。メルマガを登録しておくことで、投資に役立つ最新情報を自動的に得られます。ニュースレターを発行しているスタートアップもあり、自社の最新情報を定期的に配信してくれるため、投資先として興味がある場合は登録しておくことが望ましいです。

また、投資に関する最新情報を得る他の手段として「Googleアラート」の設定が挙げられます。「Googleアラート」でスタートアップ投資に関するキーワードを設定しておくことにより、任意のタイミングでWeb上のスタートアップ投資に関わるニュースをまとめたメールが届きます。

データベース(DB)

各種データベースを活用することで、そこに掲載されているスタートアップに関する情報を閲覧・取得できます。また、一定の基準で選定したスタートアップついてまとめたロングリストなども抽出できるという特徴もあります。

データベースには、無料のものと有料のものが存在します。有料のものはコストがかかる分、スタートアップの掲載データ、ディール情報、関連ニュースが無料のものよりも充実しています。さらに情報の鮮度も高く、スタートアップ以外の企業の専門的・体系的な業界レポートまで閲覧できるため、市場環境などのマクロトレンドを把握しやすくなります。

イベント・展示会

イベントや展示会には、対面ならではの生の情報を得られたり、参加者同士のネットワークを構築できたりするといったメリットがあります。

生の情報の例としては、イベントや展示会に参加するスタートアップの新製品や新サービスの情報があります。このような情報は、他の手法で得ることが難しく、かつ密度が濃い傾向があります。

またイベントや展示会には、有名なスタートアップから、まだ知名度の低い次世代のスタートアップまで参加することもあります。幅広いタイプのスタートアップと生で接触できることも、イベントや展示会の魅力です。

CVCにおける特徴的なソーシング手法

続いて、CVCにおける特徴的なソーシング手法について解説します。

アクセラレータープログラム

アクセラレーターとは、スタートアップや起業家をサポートし、事業成長を促進する支援事業者のことです。アクセラレータープログラムに企業スポンサーとして参加することで、スタートアップの最新かつクローズドな情報を取得できます。

また、アクセラレータープログラムへの参加によって、応募してくれるスタートアップとのネットワーキングが可能です。さらにアクセラレータープログラムの審査員という肩書きを利用し、プロのベンチャーキャピタリストや業界の著名人を招くことで、有力なスタートアップとつながれる可能性があります。

大学・研究機関(ラボラトリ)

大学による産学連携プログラムや研究機関に企業スポンサーとして参加することで、スタートアップの技術に関する有益な情報を得られます。特に、テック系スタートアップの先端分野の情報を取得するのに有効です。例えば、大学との実証実験の情報など、他の媒体ではなかなか入手できないような情報を得られます。

また、アカデミック分野の知見やネットワークを獲得できることもメリットです。投資先として選定したいスタートアップの業種に目処がついている場合は、大学や研究機関の活用が推奨されます。

VCへのLP出資

ベンチャーキャピタル(VC)にLP(Limited Partners;無限責任組合員)として出資することで、彼らが投資したスタートアップの情報やクローズドな情報を入手できます。

VCのなかには、専門分野に関する勉強会を実施しているものもあります。勉強会への参加により、スタートアップ投資に役立つ知識や、ベンチャーキャピタリストの立ち振る舞い方などを学べます。

また、LP同士でのネットワークを構築したり、協調投資の機会を得たりできることもメリットです。最初から自力で良質なスタートアップを探す方法もありますが、ネットワークがない場合、その難易度は高いと考えられます。

よって、まずVCにLP出資することで、VCからビジネスマッチングサポートを受けネットワークを広げることがおすすめです。そこで発見したスタートアップに投資していくことで、投資実績による認知度拡大が期待でき、より多くのスタートアップとつながりやすくなるでしょう。

CVCで良いソーシングをするためのポイント

CVCで良いソーシングをするためには、以下の3点を押さえると良いでしょう。

量を妥協しない

ソーシングにおいて「質を重視して、ある程度絞ったソーシングをするのか、それともより多くのスタートアップと会い、量を重視するのか」が議論されることがあります。

この問題については、必ずしもどちらかが正しいとはいえませんが、ソニーのCVCである「Sony Innovation Fund」では、数多くのスタートアップと会うことを重視しているとインタビューの中で述べています。

接触するスタートアップを増やすことで、必然的に優良なスタートアップと会える可能性は上がります。またネットワークの拡大が容易となるため、他のスタートアップの紹介を受け、さらにそこから新たなスタートアップを紹介してもらえるという好循環を作り出すことも可能です。そして投資におけるリスクヘッジの基本は分散ですが、魅力的な投資先を複数見つけられる可能性も上がるため、投資も実行しやすくなります。

目的に応じたソーシング手法を

目的に応じて、採用するソーシング手法も異なってきます。例えば、大学発スタートアップや技術に特化した研究型スタートアップを探すケースを想定すると、メディアやデータベースを使うよりも、大学の産学連携プログラムや研究機関に企業スポンサーとして参加した方が効果的だと考えられます。

また大学系VCとの関係を有しているのであれば、そこからソーシングを行ったほうが、目的を達成できる確率は飛躍的に上がると考えられます。これは一例に過ぎませんが、このように目的に沿ったソーシング手法を選ぶことが重要です。また、目的以外にも必要となる費用や時間などのコストも鑑みながら調査することも、同時に見ておくべきポイントとして挙げられるでしょう。

インバウンドの活用

ソーシングはアウトバウンドで探すだけではなく、他のVC/CVCや事業会社の新規事業担当者から紹介してもらうといったインバウンドのケースもあります。スタートアップ投資の世界において、こうしたコミュニティに入っておくことで、良いスタートアップと出会える確率は上がります。

実際に、グロービス・キャピタル・パートナーズが執筆した「ベンチャーキャピタルの実務」(2022/11/25)では、ソーシングの内訳のうち、案件の96%は紹介や長期的関係からとなっています。(参考:https://str.toyokeizai.net/books/9784492654941/

ただし、一方的に紹介してもらうだけではいずれ紹介されなくなってしまうため、常にGiveの精神を持ちながらコミュニケーションを取っていくことが大切です。

まとめ

CVCでソーシングを行う際は、有効な手法やポイントについて押さえる必要があります。CVC投資を行う際に押さえるべきポイントは、以下のとおりです。

  • 多くのスタートアップと接触する
  • 目的に応じて適切なソーシング手法を選ぶ
  • インバウンドを活用しスタートアップを紹介してもらえるような体制を整える

以上が、CVCにおけるソーシングのポイントとなります。

是非、当社の取り組みについて興味がございましたら、TOPPAN CVCまでご連絡ください。