フードテックとは? 食糧難を救う糸口に:注目の事業領域 #3

フードテック(FoodTech)は、その名の通り、食品分野において新たなテクノロジーを活用した取り組みを指します。

生産から加工、流通、消費まで、食に関わるあらゆる段階において、生産効率を高めたり、安全性を高めたりといった内容を含みます。

食糧難を救うフードテック、その可能性

フードテックが注目される一番の理由は、食糧難への解決策として期待されているためです。

国連の推計によると、世界人口は、2030年までに85億人に達し、2050年には97億人に増加すると言われています。人口増加率は緩やかになる予測ではあるものの、増加が続く見込みです。

さらには、気候変動や農地の減少といった問題も重なり、食糧供給の持続性が世界全体として解決すべき大きな問題の1つになっています。

実際、フードテック分野における投資額はグローバルでも一定の規模に達しています。米ベンチャーキャピタルのAgFunderの調査レポート[1]によると、2021年の投資額は517億ドルに上っています。

[1] 2022 AgFunder AgriFoodTech Investment Report

このように、フードテック分野は、食糧難への解決策として期待を集めていますが、実際にフードテックは食糧難に対してどのように貢献し得るのでしょうか。

以下、3つのカテゴリーから紹介します。

食糧の生産効率の向上

新たなテクノロジーを活用することで、食糧生産の効率を高めることができます。

データ分析によって農地を有効活用し、面積当たりの生産性を向上させることが可能です。また、農作業を自動化することで人手不足の解消や効率化に役立ったりなど、さまざまな側面での貢献が期待されています。

食品ロスの削減やサプライチェーンの最適化

フードテックは、食品ロスの削減やサプライチェーンの最適化にも貢献できます。

AIやセンサー技術を活用して在庫管理や流通を効率化すれば、過剰な生産を抑制し、廃棄を減らしたり、需給格差を均衡化させたりすることが可能でしょう。あるいは、保存技術や運搬手段を革新することで、より効率的な食品供給が実現できるかもしれません。

新たな食糧供給源の開拓

フードテックはまた、新たな食糧供給源を開拓することで、食糧難への解決の糸口になる可能性を秘めています。

例えば昆虫食はその代表的な例です。そのほか、植物ベースの代替プロテインや、培養肉などの開発も進んでいます。食糧の供給源を多様化することで、持続可能な食糧システムの構築が可能になるのです。

フードテック領域での、TOPPANの取り組みや投資実績

TOPPANとしても、フードテック領域での取り組みに力を入れています。今回はその一部を紹介します。

GLフィルムにより、食品の賞味期限延伸

TOPPANが開発している「GL FILM」は、食料品をはじめとしたさまざまな製品の包装に使用できる透明のフィルムです。

酸素や水蒸気を通しにくいバリア性能に優れており、湿気や乾燥、腐敗などから中身の食品を保護します。これにより食品の鮮度を保持し、賞味期限の延長を実現することで、食品ロス削減に寄与しています。

またGL FILMをプラスチック成形品の代替として使用することで、プラスチック使用量の削減に寄与。また単一素材で製造されているため、使用後のリサイクル適性が高いという点も、特徴です。さらには一般的なアルミフィルムと比べて、製造時の二酸化炭素の排出を抑えられるなど、サステナブルな社会の実現に向けてさまざまな角度から貢献しています。

TOPPAN、レトルト対応の紙製スタンディングパウチを開発

上で紹介した「GL FILM」を使用して、TOPPANではレトルト食品に対応した紙製のスタンディングパウチを開発しました。

従来のアルミを使用したレトルトパウチと比べて、プラスチックの使用量をおよそ25%削減することに成功(*[1])。また、製造時の二酸化炭素の排出量はおよそ17%削減できることがわかっています(*[2])。

[1] 当社調べ。アルミ箔を使用したラミネート包材との比較。

[2] 当社算定。アルミ箔を使用したラミネート包材との比較。CO₂排出量の算定範囲はパッケージに関わる①原料の調達・製造、②製造、③輸送、④リサイクル・廃棄。

培養肉の研究への参画

培養肉は、動物の細胞を培養して作る肉のこと。肉の供給不足を解消する試みとして、研究が進んでいます。調査によると、世界の培養肉の市場規模は、2030年には20億ドルに達する見込みで、また別の調査では、2040年に食肉市場の30%以上を代替するとの試算も出ています。

TOPPANでは、大阪大学大学院工学研究科や複数の企業と共同で「培養肉未来創造コンソーシアム」を設立するなど、培養肉の研究を積極的に推進しています。

TOPPAN、農産物の需給マッチングプラットフォームが会津若松市のスマートシティ推進事業に採用

また食品供給に関しても、TOPPANがこれまで培ってきたテクノロジーを活用しています。

その1つが、農産物の需給マッチングプラットフォーム「ジモノミッケ!™」の開発です。

「ジモノミッケ!」は、アプリ上で農産物の生産と需要の情報を可視化し、地産地消を促進するマッチングサービス。福島県会津若松市とその近隣地域で実証実験を行うなど、開発を進めています。

実験では、規格外品の取扱いや受発注を可視化することで食品ロスの削減につながるのではといった声や、地域での流通を最適化したり梱包を簡易にしたりすることで、食品生産者の負担を軽減できるのではといった意見が挙がっていました。

フードテックを始め、さまざまな先端領域に投資

今回取り上げたフードテックのほか、TOPPANでは注目の事業領域において、60社以上のスタートアップへCVC投資を行っています(2023年の投資実績はこちら)。

グループ企業を含め印刷に限らず幅広い領域にわたって事業を展開しているTOPPANの強みを活かして、スタートアップとのシナジーを生み出していきます。

TOPPAN CVCでは、スタートアップとの資本業務提携によるシナジー創出を目指しております。CVC投資に限らず、幅広く新事業を一緒に創っていく手法について日々ディスカッションしておりますので、ご興味がある方はぜひお問い合わせください。