サーキュラーエコノミー(循環型経済)とは?:注目の事業領域 #1

「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」は、近年注目を集めている経済モデルです。

地球環境への負荷や資源活用などの観点から、従来のリニアエコノミー(線形経済)に代わるモデルとして提唱されました。

 

サーキュラーエコノミーとは? 3 つの原則

サーキュラーエコノミーを提唱した英エレン・マッカーサー財団は、サーキュラーエコノミーの原則として次の3つを挙げています。

  • 廃棄物と汚染を取り除く(Eliminate waste and pollution)
  • 製品や資源を循環させる(Circulate products and materials (at their highest value))
  • 自然を再生する(Regenerate nature)

リニアエコノミーが、作って、使って、捨てるという経済モデルであるのに対して、サーキュラーエコノミーは、製品や資源の寿命が終わった後も、再利用やリサイクル、修理、メンテナンスなどを通じて製品の価値を循環させ、廃棄を最小限に抑えようとします。

 

サーキュラーエコノミーが注目を集める社会的背景

サーキュラーエコノミーが注目を集めている背景には、いくつかの理由がありますが、そのうちの1つが地球環境への負荷の増大と、同時に引き起こされる資源の枯渇の問題です。

国際シンクタンクであるGlobal Footprint Networkは、人類が地球上の生物資源を使い果たす日を1年間に見立てて示した「アースオーバーシュートデー」を毎年発表しています。

2023年は、8月2日にオーバーシュートを迎えました。言い換えれば、1年間トータルで見ると、人類は およそ地球1.7個分の資源を消費しているということです。

このオーバーシュート状態は1970年代以降続いており、年を追うごとに着実に人類の資源消費が地球の再生能力を超えて増え続けています。

世界的な人口の増加や、各国の経済成長に伴う需要の拡大などによって、限られた資源をどう活用していくかという視点での経済モデルが、地球レベルで必要不可欠になってきているのです。

また近年の情勢不安や感染症の拡大にも見られるように、国際情勢の不安は、各国の資源供給に大きな影響を与えます。特に資源供給を他国からの輸入などに頼っている場合は、経済活動に必要な資源供給が不安定化するリスクを孕んでいます。

こうした点からも、各国、そして地球全体にとって不可欠で合理的なものとしてサーキュラーエコノミーへの移行が強く望まれているのです。

実際、政府や国際機関もサーキュラーエコノミーを推進するべく制度を整えています。

例えばSDGs(持続可能な開発目標)の「12:つくる責任 つかう責任」の中でも、以下のように、サーキュラーエコノミーへの移行に直結する目標が掲げられています。

  • 12.2:2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。
  • 12.5:2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。

日本国内に目を移せば、2021年3月には環境省、経済産業省、経団連が共同で、「循環経済パートナーシップ」を創設。サーキュラーエコノミーの実現に向けて官民連携で取り組みを進めています。

 

サーキュラーエコノミーの市場規模、2030年までに全世界で600兆円を超えるとの予測も

ビジネスの観点でも、サーキュラーエコノミーの市場規模は着実に拡大しています。

アクセンチュアの調査では、世界全体でのサーキュラーエコノミーの市場規模は2030年までにおよそ4.5兆ドル(1ドル140円換算で630兆円)に上ると予測しています(*[1])。国内でも、内閣が進める「成長戦略フォローアップ」内で、2030年までにサーキュラーエコノミーに関するビジネスの市場規模を、現在の約50兆円から80兆円以上に拡大するという目標を掲げています(*[2])。

企業としても、サーキュラーエコノミーに向けた取り組みを進めていくことがビジネスチャンスを拡大することにつながると言えるでしょう。

[1] アクセンチュア株式会社「無駄を富に変える:サーキュラー・エコノミーで競争優位性を確立する」
[2] 【別添】成長戦略フォローアップ工程表(令和3年6月18日閣議決定)

サーキュラーエコノミーに関連するTOPPANの取り組み

TOPPANでも、サーキュラーエコノミーの推進に力を入れています。今回はその一部の取り組みを紹介します。

「トッパングループ環境ビジョン2050」の策定

TOPPANでは持続可能な社会の実現に向けて、古くは1990年代から専門部署を設置し、グループ全体でサステナビリティ経営を推進してきました。

近年では、2021年に地球環境課題への長期的な取り組み方針として「トッパングループ環境ビジョン2050」を策定。その中でも4つの柱の1つとして、サーキュラーエコノミーに貢献することを明示しています(*[3])。

  • 資源循環型社会への貢献:廃棄物のゼロエミッションを目指します。

また同年に策定した「トッパングループ2030年度中長期環境目標」でも、サーキュラーエコノミーに向けて、以下2つの具体的な指標を掲げています。

  • 廃棄物最終埋立量を2017年度比で60%削減すること(生産由来の廃棄物が対象)
  • 廃プラスチックのマテリアルリサイクル率を2017年度比で12%増やすこと

環境配慮型パッケージの提案

TOPPANでは、商品やサービスも、サーキュラーエコノミーに資するものを提供しています。

その1つが、地球環境への負荷を軽減する「SUSTAINABLE-VALUE® Packaging」です。

資源の調達から製造、利用、さらにはその後に至るまで、製品のライフサイクル全体を通じて持続可能性を追求することで、環境負荷の低減と顧客の事業成長を両立させる環境配慮型パッケージを提案しています。

  • 調達:再生材やバイオマス素材を有効活用。森林資源の持続可能な利用に配慮した紙の利用を推進
  • 設計・製造:使いやすさや内容物の品質保持に配慮しながら、製品のライフサイクル全体で環境負荷を低減させるための設計。
  • リサイクル・廃棄:リサイクル適性の向上と、リサイクルスキームを構築

TOPPANの技術を環境問題解決に活かした「エコクラシー」ブランド

また、TOPPANがこれまで培ってきた技術と製品開発の発想を、環境問題の解決に役立てようと立ち上げたのが、リサイクルブランド「エコクラシー」です。

現在エコクラシーブランドでは、以下2つの製品を提供しています。

廃棄化粧品を再利用した「エコスメインキ」。化粧品メーカーなどと共同で、廃棄化粧品を、企業の販促物などの印刷に再利用するアップサイクルの取り組みをしている

使用後にリサイクルできる装飾幕素材「エコクラシーシート」。横断幕や懸垂幕など、幅広い用途に活用できる

TBM社と資本業務提携、環境配慮素材「LIMEX」の特性を活かした研究開発

サーキュラーエコノミー実現への取り組みは、自社の製品開発だけにとどまりません。

TOPPANでは、株式会社TBMと資本業務提携を締結。TBMが開発した、プラスチックの代替素材「LIMEX(ライメックス)」の特性を活かした、研究、商品開発を進めています。

TOPPANが、パッケージ事業や建装材事業など幅広い事業分野で培ってきたノウハウと組み合わせることで、事業を拡大し、近年、海洋汚染の要因などとしても問題視されているマイクロプラスチックに関する問題解決などに貢献していきたいと考えています。

[3] https://www.toppan.co.jp/news/2023/04/newsrelease230427_1.html

 

サーキュラーエコノミーをはじめ、注目の投資領域で実績多数

TOPPANではこれまで、今回取り上げた「サーキュラーエコノミー」をはじめ、注目が集まる事業領域において、60社以上に対してCVC投資を行っています(2022年の投資実績はこちら)。

背景には、グループ企業を含め印刷に限らず幅広い領域にわたって事業を展開しておりシナジーを生み出せるTOPPANの強みがあります。

CVC投資に関心があるスタートアップは、こちらのサイトからお問い合わせください。