近年、多くの企業が取り組んでいる「SDGs」。日本語で言うと「持続可能な開発目標」となりますが、項目が多岐にわたるため、全体像を正確につかむのが難しいという声も聞かれます。この記事では、SDGsの内容や日本での取り組み、企業にとっての有用性などをまとめました。社会貢献としても評価されるSDGs、ぜひ有効に活用して企業価値の向上を目指しましょう。
目次
SDGsとは
引用元:外務省「JAPAN SDGs Action Platform」
「SGDs(エスディージーズ)」とは、「Sustainable Development Goals」の頭文字を取ったもので、2005年9月に開催された国連サミットにおいて、加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されている、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。これ以前、2001年より「MDGs」というミレニアム開発目標が策定されていましたが、現在はSGDsがその後継として国連加盟193カ国(2020年度)で推進されています。
SDGsは17のゴールと、それらに関する169のターゲットから構成されています。全世界の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」という理念のもと、発展途上国の貧困解消や経済の向上はもちろん、先進国においてはユニバーサルな目標を掲げて、SGDsの達成に向けた努力を行っています。
「SGDsの主要原則」
2030アジェンダにはSGDsの主要原則として、以下の5つの項目が記載されています。
普遍性……先進国を含め、全ての国が行動
包摂性……人間の安全保障の理念を反映し 「誰一人取り残さない」
参画型……全てのステークホルダーが役割を
統合性……社会・経済・環境に統合的に取り組む
透明性……定期的にフォローアップ
なお、2020年1月に、SGDs達成のための「行動の10年(Decade of Action)」がスタートしました。目標の2030年まで残り10年を切ったことで、全世界的に目標達成に向けて取り組みのスピードがアップしており、進展を促すための様々なアクションや、規模の拡大など、日本でも社会が一丸となって、SGDsに取り組む時代が来ています。
SDGsの目的
SGDsが掲げている17の目標について、以下に列挙します。目標は環境問題や社会問題など、広い範囲に及びますが、国により注力している項目が異なります。「貧困をなくそう」や「産業と技術革新の基盤をつくろう」「住み続けられるまちづくりを」は達成率が高い反面、「飢餓をゼロに」「陸の豊かさも守ろう」は停滞しており、2020年からのコロナ禍も少なからず進捗に影響を与えるのではないかと懸念されています。
参考)Sustainable Development Report 2020
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロ
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術革新の基盤をつくろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任 つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
これらの目標の下に169のターゲットが定められています。外務省のプラットフォームに、我が国の取り組みや現況などが詳細に報告されています。ぜひこの機会にSGDsについて認識を深めてみてはいかがでしょう。
参考)外務省 JAPAN SDGs Action Platform
日本のSDGsの取り組み
2016年5月20日、日本政府は内閣総理大臣を本部長、官房長官と外務大臣を副本部長、全閣僚を構成員とするSDGs推進本部を設置。第一回会合を行いました。さらに26日には日本が議長国を務めたG7伊勢志摩サミットにおいて、中東地域への支援、保健分野の支援、女性の活躍推進について、SDGsの内容に沿った取り組みを発表しました。また、2018年ニューヨークの国連本部で行われたSDGsに関する政治フォーラムにおいて、日本は民間企業や市民団体へSDGsの取り組みを促進しながら、オール・ジャパンでSDGsに邁進することを表明しました。
これを受け、日本政府は「SDGsアクションプラン2021」を策定。感染症対策と次なる危機への備え、よりよい復興に向けたビジネスとイノベーションを通じた成長戦略などを重要事項として取り込み、積極的なSGDs導入を促す方針です。さらに、すぐれた取り組みを提案する都市を選定する「SDGs未来都市」や、企業・団体に向けた「ジャパンSDGsアワード」など、成果を目指して様々なアクションを起こしています。
企業がSDGsに取り組むべき理由
社会全体で一丸となって取り組むべきSGDs。その旗手となるのが企業や団体です。前項で、まだ日本では企業レベルの取り組みが芳しくないとお伝えしましたが、グローバルな視野からSGDsを捉えた場合、企業にとってビジネスに様々なメリットがあることがわかります。次項では企業がSGDsに取り組むべき理由を、以下の3つのポイントに分けて考えていきます。
●経済・ビジネスにとってのSDGs
日本の政府、各省庁では公式にSGDsを推奨しており、達成度に応じて様々なリワードが設けられています。また、企業としてそれらの動きに参加することで、事業の方向性を対外的に周知することができます。
●SDGsの市場規模
SGDsは国内はもとより国連加盟国すべてがマーケットとなります。現状国内に限定されている事業が、SGDsを掲げることで、一躍世界規模に発展する可能性があります。
●ビジネスチャンスになる可能性
今後2030年に向けて、SDGsの動きは国内外ともに活発になると予想されます。SGDsを取り込んだビジネスが共感や信頼を獲得し、新規市場の開拓や事業機会創出の可能性が生まれます。
経済・ビジネスにとってのSDGs
従来のビジネスは利潤追求が第一で、収益の一部や余剰を社会に還元するという考えが一般的でした。しかし、近年ではビジネスモデルに社会貢献を組み込むことで、企業の価値向上を目指すという考え方にシフトしています。中でもSGDsは政府が枠組みを作って推奨しており、2017年に制定された「ジャパンSDGsアワード」は、企業努力や功績を周知する大きなチャンスとして、SDGsに取り組む幅広いジャンルの企業・団体が応募しています。2020年「ジャパンSDGsアワード」内閣総理大臣賞には、日本初の再エネルギー特化型新電力支援サービス「みんなの電気」が選出されました。その他、市町村や小学校なども顕著な功績があったとして表彰を受けています。
なお、事業の内容がSDGsの17の目標とリンクする企業にとっては、認証ラベルも注目したい制度です。例として「目標14 海の豊かさを守ろう」であれば、SGDsを推進することで「MSC認証(海洋管理協議会)」という認証エコラベルを得ることが可能です。また、「目標15 森の豊かさを守ろう」であれば、「FSC認証(森林管理協議会)」という認証ラベルがあります。これらは企業が事業を通じて社会貢献を行っているという証明になり、投資家からの信頼度や社員のモチベーションアップ、優秀な人材の獲得など、ビジネス上の様々なメリットがあります。
SDGsの市場規模
世界経済フォーラムによる2017年のダボス会議で、「SDGsは2030年までに12兆ドルの新たな市場機会を産み出す」という情報が共有されました。この数字は「ビジネスと持続可能な開発委員会(Business & Sustainable Development Commission)」の試算によるもので、日本円にすると約1340兆円。さらに2030年までに世界で約3億8000万人の雇用を創出する可能性があると予測されています。これは世界的に見ても大きなチャンスと考えられますが、現況を鑑みるに達成率上位の国がほぼヨーロッパ勢で占められ、今後日本がこのマーケットにどう食い込んでいくのかが課題と言えます。
環境省の手引きによると、「SDGs が掲げる(17の目標の下にある) 169 のターゲットは、今後変化が起きる領域でもあり、ビジネスにおいても新たな需要があると読むことができるのです」と記載されています。制定から5年、ようやく動きを見せてきた日本でのSDGsが、2030年に向けてどこまで市場を活性化できるかで、経済にも少なからず影響がありそうです。なお、日経新聞が行った「SDGs経営調査(2019年)」 によると「SDGsへの取り組みに積極的な企業は、そうでない企業よりも収益力が高い傾向にある」ということです。世界規模のムーブメントであるSDGsを、いかにうまく戦略として活用するかが、将来的な企業の存続において重要なカギとなるでしょう。
ビジネスチャンスになる可能性
SDGsは目標やターゲットが細分化されており、多岐にわたる社会問題に対しての取り組みが行われています。そして同時に、それらの問題を解決するためのソリューションが求められています。その内容は、発想や製品、技術やサービスに至るまで様々です。従来であれば、多くの日本企業は商圏を国内に向けていましたが、SDGsは世界の共通言語となっているため、ニーズに合うビジネスであれば、マーケットが世界規模に発展します。このビジネスチャンスに向けて、アプローチをかけている企業は少なくありません。
すでに国際規模の大手企業では、SDGsの達成を目標とするバリューチェーンの見直しをスタートしています。また、これら大手の動きは関連する中小企業にも影響が及び、⽇本経済団体連合会や各業界団体、地⽅銀⾏などを含む、経済界全体でSDGsへの対応が拡大しています。さらに、国際標準化機構では2017年11月より新規格「ISO20400(持続可能な調達に関するガイダンスの利用方法)」が発行されており、今まで業界団体主導の規格による監査が中心であったバリューチェーンのマネジメントにおいて、SDGsの見地に立ったガイドラインによる運営ができるようになりました。これもSDGsにまつわるビジネスチャンスに向けての、足場固めに役立っています。
スタートアップにとってのSDGsの重要性
日本では「社会貢献は大企業が行うもの」と思われがちですが、スタートアップの柔軟性や機動力はSDGsを達成するうえで大きなアドバンテージになります。スタートアップが新たなビジネスチャンスを獲得し、長期的な成長を期待できるSDGsのメリットを3つの側面から考えてみました。
■発想力やスピード、スタートアップの強みが生きる
SDGsに関する事業には前例のないものが多く、独創的な発想や突破力、意思決定のスピードなど、スタートアップならではの強みが生かせます。また、SDGsに取り組むことで「社会問題に意識の高い企業」というブランディング効果を生み出し、取引先の開拓や優秀な人材確保にも役立ちます。さらには取り組み内容が消費者の共感を生むことで収益につながるケースも多く、中長期的な戦略としてビジネスにSDGsを組み入れることで、実績の少ないスタートアップに企業価値をプラスするメリットがあります。
■連携によるイノベーションの可能性
SDCsは行政や他社との連携により達成を目指すケースが少なくありません。実際、大学と民間企業、地方公共団体などが手を取り「産学官連携」として活動するSDCsプラットフォームが数多く形成されています。また、スタートアップ企業においても研究機関との連携による新技術の開発など、イノベーションでSDGsに貢献している例が多々あります。さらに、NPOやNGO団体とSDGsを軸としたパートナーシップを構築することで、国内外を問わず新事業を創出している事例もあります。
取り組み事例(外務省)Japan SDGs Action Platform
■注目される「ESG投資」
スタートアップにとって、SDGsは資金調達にも深く関わってきます。2010年、世界最大級の機関投資家GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がPRI(責任投資原則)に署名したことで、日本でも投資家から企業に対し「ESG」に基づく情報開示が求められるようになりました。ESGとは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったもので、このESG投資は年々全世界的に割合を増やしています。スタートアップがより有利な条件で投資を受けるには、しっかりとした事業計画に加えて、社会における責任を果たすことも重要視される時代になったと言えます。
まとめ
SDGsは2030年を目標達成年度に定めていますが、その後も引き続き、社会や環境に対する貢献は企業にとって不可欠な条件となることが予測されます。経営リスクを回避し、顧客や社会からの信頼を獲得するためにも、SDGsは可及的速やかに取り組むべき課題と言えます。厳しい生存競争に勝ち抜くためにも、ぜひSDGsの可能性を検討してみて下さい。
また、凸版印刷としてもSDGsの達成に向けた取り組みを行っておりますので、我々の考えについてもぜひご一読ください。
参考)SDGsの先にあるトッパンが目指すミライ「ふれあい豊かでサステナブルなくらし」
参考)TOPPAN SDGs STATEMENT
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