2023年、TOPPAN CVC JOURNALでは、様々なスタートアップとの取り組みを紹介してきました。本記事は同年最後の更新です。というわけで今回は、TOPPAN CVCの2023年の活動をダイジェストで紹介していきます。
2023年、TOPPAN CVCはMZ世代向けマーケティングサービスや使い続けられるECサービスを展開するスタートアップとの資本業務提携を実行。また、過去に投資したスタートアップと共同でサンプリングプロモーションのサービス提供を開始するなど、協業の観点でも成果を公開できました。
それでは、2023年のTOPPAN CVCの活動を、振り返っていきましょう。
目次
出資・資本業務提携・業務提携
免疫センサデバイス開発の大阪大発スタートアップ、イムノセンスに出資
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000077216.html
株式会社イムノセンスは2月 、シリーズB-2ラウンドで総額5億円の資金調達実施を発表しました。TOPPANはこのラウンドに参加し、同社と資本業務提携を締結しています。
イムノセンスは、創業者である大阪大学産業科学研究所特任教授の民谷栄一氏が開発した「GLEIA法」という免疫反応と電気化学反応を組み合わせた独自の免疫測定技術を活用して、POCT(※)向け免疫センサデバイスの開発に取り組む大阪大学発のスタートアップ。同社の開発する免疫センサは、心不全や塞栓症など様々な疾患を迅速診断するための免疫検査デバイスであり、既存の測定装置と比較して、小型・低価格・高感度という強みを有しています。血糖値計のように一滴の血液から疾病マーカーを測定し、数分で検査が完了することから診療所などでの迅速診断に活用することが可能です。
(※)POCT (Point of care testing) : 診療所、在宅、遠隔地、災害現場など様々な医療現場で行われるリアルタイム検査の総称。
イムノセンスとTOPPANは2021年に業務提携を実施。この提携が順調に進んでいることもあり、今回の出資に繋がりました。
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日本のマンガ・アニメのIP価値最大化をサポートするAniqueと資本業務提携
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000110.000048489.html
6月、日本のマンガ・アニメIPの価値最大化をサポートする、IP×ITによるエンターテインメント分野のスタートアップAnique株式会社とTOPPANの資本業務提携を発表しました。
日本動画協会アニメ産業レポート2022によれば、海外における日本アニメ市場は過去10年で市場規模は約5倍に成長。日本の市場規模と同等に迫る規模に至っています。作品や媒体、形態等の多面的な側面でも、日本のIPのグローバル展開の可能性はまだまだ大きいと考えています。
この点、Aniqueはグッズ販売、オンライン展覧会、NFTといったサービス・体験の提供を通じて、フィジカル・デジタル両方の側面からIPの価値最大化に取り組んできました。TOPPANは情報加工・表現技術の提供者として、同社と日本のIPをグローバルに届け、楽しむことができるメディアミックスの実現に向けて、協働していきます。
フォトシンスらと顔認証入退室管理ソリューション「ピッコネ」の開発で協業
https://www.holdings.toppan.com/ja/news/2023/07/newsrelease230703_1.html
TOPPANは株式会社Photosynth及びTRIBAWL株式会社と協業し、顔認証入退室管理ソリューション「ピッコネ®」を開発したことを7月に発表しました。ピッコネは、顔情報のみで時間単位での会議室予約ができたり、スマートロックと連携したドア解錠といった機能が使えるサービスです。API連携をすることで、例えば会議スペースの空き状況・予約システムなどの機能拡張も可能。顔認証サービスに様々な機能を追加することで、オフィスのDXをサポートしていきます。
PhotosynthとTOPPANは、2020年に資本業務提携契約を締結し、これまで商品開発に取り組んできました。ピッコネはその取り組みが結実したサービスです。Photosynthが開発する後付け型スマートロック「Akerun」、TRIBAWLが開発する顔認証デバイス「kaopa」、そしてTOPPANが開発する「MyAnchor®」による顔認証システムを組み合わせることで実現しました。
MZ世代向けブランドマーケティングサービス開発を目指し、NEW STANDARDと資本業務提携
https://www.holdings.toppan.com/ja/news/2023/07/newsrelease230718_1.html
オリジナルのAIツールやデザイン思考などを活用したブランド開発およびマーケティング事業を展開するNEW STANDARD株式会社とTOPPANは、6月に資本業務提携をしました。
近年、企業のマーケティング・プロモーション活動において、データによる顧客理解とコミュニケーション設計・顧客体験向上の重要性が増しています。特にMZ世代(※1)との新たなコミュニケーション手法を模索している会社も多いのではないでしょうか。NEW STANDARDは、同世代を中心とする顧客データベースとトレンド情報、オリジナルのAIツールおよびデザイン思考を用い、アジャイル型(※2)での「新しい価値(イミ)」創造と、ブランド開発やコミュニケーションを設計する知見を有しています。同社とTOPPANが提携することで「デザイン思考を活用したブランド開発およびマーケティングサービスの開発」「MZ世代のユーザートレンドレポートの定期発行」「オリジナルAIツール開発」といった協業を推進していく予定です。
(※1) MZ世代:ミレニアルズ/Z世代の略称で、1980年~2010年頃にまでに生まれた層の人たち。
(※2) アジャイル:「素早い・機敏な」という意味で、開発・制作などのプロセスにおいては、仕様や設計の変更があることを前提に進め、徐々にすり合わせや検証を重ねていくアプローチ。
店舗DXスタッフアプリ「はたLuck」とサンプリングプロモーションで協業
https://www.holdings.toppan.com/ja/news/2023/08/newsrelease230801_1.html
TOPPANは2011年に資本業務提携契約を締結した株式会社HataLuck and Personと、2023年8月1日から、商業施設で働くスタッフに向けた働きがい向上と、自社商品プロモーションを行いたい企業に向けた効果的なサンプリングプロモーション施策を同時に提供するサービス「店舗DXスタッフアプリ『はたLuck®』活用サンプリング」の提供を開始しました。
本サービスは、全国のショッピングセンターや商業施設のシフトワーカー約13.5万人(2023年8月1日時点)に導入されている「店舗DXスタッフアプリ『はたLuck®』」を活用することで、商品のサンプリングに加えて事前・事後のアンケート調査が可能な食品・飲料・化粧品業界等のメーカー企業向けのサンプリングプロモーションとシフトワーカーの働きがい向上を同時に実現するものです。第一弾として、三井不動産グループが運営・管理する商業施設内「三井ショッピングパーク ららぽーと」等)に導入しています。
スマホ時代に使い続けられるECを実現するChaiと資本業務提携
https://www.chai.co.jp/posts/7AS99YiG
8月、使い続けられるECをモットーに、LINEで完結するオンラインショップ「BuyChat」を提供する株式会社ChaiとTOPPANの資本業務提携を発表しました。
なぜコミュニケーションツールを使ったECが必要なのか、TOPPANはどうしてこの領域に関心を抱いたのか、両社が手を組むことで何を実現していくのか。Chai代表の西澤さんと、TOPPAN CVCの内田と高橋がTOPPAN CVC JOURNALにて鼎談しています。
【関連記事】 BuyChatが作る一気通貫の購買体験。スモールビジネス×ECで実現する、温かみのある接客 | Chai × TOPPAN 協業への扉 |
凸版印刷からTOPPANホールディングスへ社名変更
https://www.holdings.toppan.com/ja/news/2023/10/newsrelease231002_1.html
CVC関連のニュースではありませんが、凸版印刷株式会社は2023年10月1日、TOPPANホールディングス株式会社へと社名を変更しています。
「Graffer AI Studio」を導入、生成AIのビジネス活用へ
TOPPANは2020年に株式会社グラファーと資本業務提携契約を締結。それを受け2023年10月には、同社が提供する生成AIの活用を推進するプロダクト「Graffer AI Studio」を導入しました。
「Graffer AI Studio」は、汎用的に活用しやすいチャットサービスに加えて、社内データのみを元にした高精度なAI情報検索ができる「ナレッジベース」、大規模処理や定型業務の活用に欠かせない面倒な処理をAIに丸投げできる「一括処理機能」を提供しており、法人はこれらを通じて業務改善や自社の競争力強化につなげることができます。
TOPPANは業務の生産性向上やサービス品質のさらなる向上を目指し「Graffer AI Studio」の導入を決定しました。決め手となったのは「行政領域の事業で培った高いセキュリティ」「大企業でも耐えうるガバナンス担保のための仕組み」「チャットサービスに加え、業務に応じたアプリケーション及び機能の開発」「柔軟な料金体系」など。既存のソリュ―ションと組み合わせた新規事業の創造に向け、生成AIの実証実験を社内で進めていきます。
出資先スタートアップの上場
ispaceが東京証券取引所グロース市場へ上場
https://ispace-inc.com/jpn/news/?p=4568
「Expand our planet. Expand our future. 〜人類の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある世界へ〜」をビジョンに掲げ、月面資源開発に取り組んでいる宇宙スタートアップである株式会社ispaceが、2023年4月12日、東京証券取引所グロース市場へ上場しました。
TOPPANはispaceに、2017年に出資しております。ispaceの皆様、おめでとうございます!
ピクシーダストテクノロジーズがNasdaq市場へ上場
https://pixiedusttech.com/news/news_20230801/
波動制御技術をメカノバイオロジーや視覚・聴覚・触覚への介入・補助をする「パーソナルケア&ダイバーシティ領域」と、メタマテリアル(材質ではなく構造で特性を生み出す技術)やオフィス・工事現場等の課題解決のために適用する「ワークスペース&デジタルトランスフォーメーション領域」に重点を置いて製品を展開するピクシーダストテクノロジーズ株式会社が、2023年8月1日にNasdaq市場へ上場しました。
TOPPANはピクシーダストテクノロジーズに、2019年に出資しております。ピクシーダストテクノロジーズの皆様、おめでとうございます!
TOPPAN CVCメンバーが登場する外部記事
TOPPAN CVCは、2023年も複数のメディアに取り上げていただきました。
スタートアップファーストな大企業CVCチームの在り方とは
WITH by NovolBa
有力スタートアップに選ばれる大企業CVCチームとは 〜事業提携60社の舞台裏に迫る〜
STORIUM
研究開発型スタートアップ解体新書 -投資家編-
INITIAL
起業家とCVC、理想的な提携検討のかたちとは?事業会社からの調達法の“いろは”を語り合う座談会【イベントレポート】
FastGrow
経営会議からの権限委譲 老舗企業がスタートアップ投資に苦労した理由
ITmedia ビジネスオンライン
KEPPLE Seminar Report【CVC入門セミナー第3弾】TOPPANホールディングスの事例から紐解く スタートアップとの協業を推進するポイント
KEPPLE
CVCキーマンが注目するテックトレンド2024
MUGENLABO Magazine
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以上、TOPPAN CVCの2023年の活動をダイジェストでお送りしました。本年は前年までに引き続き、マーケティングや小売といったTOPPANの得意分野に加え新たな領域へ投資を実行でき、研究開発系のスタートアップとも接点ができました。
2024年も、TOPPAN CVCは国内外で新たなイノベーションを推進していきます。凸版印刷改め、「TOPPAN」との協業・資本提携に興味のあるスタートアップの方は、ぜひお問い合わせ下さい。
2023年も大変お世話になりました。2024年もよろしくお願いします!