ガブテック(GovTech)は、「Government(政府)」と「Technology(テクノロジー)」を組み合わせた言葉です。
行政機関が、行政サービスや市民サービスを改善するためにテクノロジーを活用する取り組み全般を指します。
近年のデジタル技術の進化により、行政機関は革新的なテクノロジーを活用したソリューションを導入し、効率的な行政運営への変革を図っています。今回は、ガブテックの将来性や市場規模、課題、実際の事例を紹介します。
ガブテックとは? 新型コロナで一層の注目
前述の通り、ガブテックとは、行政機関がテクノロジーを活用してより効率的、効果的に公共サービスを提供しようとする取り組みを指します。
2019年ごろから注目を集めはじめましたが、その後2021年9月にデジタル庁が新設されるなど、近年ガブテックの動きはますます加速しています。
ガブテックの身近な例として想像しやすいのが、行政手続きのデジタル化です。従来の行政手続きの多くは、窓口の対面のやり取りが必要なものが多く、それが担当者、市民双方の負担になっているケースがありました。手続きがデジタル上で完結できれば、深夜帯や休日など、時間を問わずにサービスを提供することが可能になり、負担の軽減につながります。
さらに、「スマートシティ」の構想にもガブテックが関係しています。スマートシティは、都市計画・整備・管理などに新たなテクノロジーを活用することで、都市の課題解決を図り、持続可能性を高めていこうとする取り組みです。
加えて、デジタル化によってデータや情報をオープンに活用できるようになることで様々な課題解決が考えられます。情報の透明性・信頼性の担保や、窓口業務の負担軽減・多言語対応等にも貢献が期待されています。
ガブテックの市場規模は全世界で40兆円とも
例えばヨーロッパのエストニアは、1997年からすでに「e-Governance」を掲げており、行政手続きの99%が電子化されている「電子政府」とも呼ばれています。
このような事例を始めとして、ガブテックは近年の世界的なトレンドの1つです。日本総合研究所によると、全世界におけるガブテックの市場規模は推計4,000億ドル(約40兆円)(*[1])に上ります。
昨今の新型コロナウイルスの拡大によって、ガブテックはさらに浸透しました。
日本では、近年デジタル庁の設立やマイナンバーカードの交付などが進み、行政システムのデジタル化が今後も浸透していくと考えられます。
[1] https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/jrireview/pdf/12502.pdf
ガブテックの課題
一方で、ガブテックには課題もあります。
市民向けの行政サービスを対象とするため、個人情報の保護やセキュリティについては一層の配慮が必要です。脆弱性のないサービス構築が求められます。さらに、適切な法制度、データ活用のルール、ガイドラインの整備が進んでいない場合、プライバシーや倫理の問題が浮上する可能性もあります。
またデジタル化を進めることで、デジタル格差の拡大が広がる可能性もあります。年齢や地域など幅広い人へ配慮したなかで取り組みを進めていかなければなりません。
また、新たなテクノロジーの導入には金銭的コストや学習コストが伴うため、長期的な視点でのリソース投下が必要です。
ガブテック領域におけるTOPPANの取り組み
TOPPANでも、ガブテックの取り組みを推進しています。その一部を取り上げます。
「行政DX」の推進
TOPPANでは、長年培ってきた自社のテクノロジーや、産官学との共創を通じて「行政DX(デジタルトランスフォーメーション)」の推進を支援しています。
TOPPANによる行政DXへの支援の歴史は古く、2000年代の住民基本台帳カードの提供まで遡ります。これをきっかけに、自治体におけるIT基盤の整備や利活用の推進、クラウド化やデータの活用、行政システムのデジタル化などに取り組んできました。
現在は、持続可能な地域社会に向けて、デジタルインフラの整備を進め、官民双方で地方におけるDXを進めています。
DXで住民の「情報格差」を解消する、自治体ポータル「クラシラセル®」
「クラシラセル®」は、TOPPANが自治体向けに提供するポータルサービスです。
TOPPANが培ってきたノウハウを基に、住民誰もが直感的に操作しやすいアプリを開発。そのアプリを起点にDXを進め、住民にとっての利便性を高めると同時に、自治体の業務負荷の軽減を実現します。
またデータ基盤との連携によって、例えば交通機関や移動スーパーの位置などをリアルタイムに取得、表示することも可能。スマートシティの推進をサポートします。
ガブテック領域のほか、幅広い領域に投資
今回取り上げたガブテックのほか、TOPPANでは注目の事業領域に対して、これまで60社以上へのCVC投資を実行しています(2023年の投資実績はこちら)。
グループ企業を含め、印刷に限らず幅広い領域で事業を展開しているTOPPANの強みを活かして、スタートアップとのシナジーを生み出していきます。
TOPPAN CVCでは、スタートアップとの資本業務提携によるシナジー創出を目指しております。CVC投資に限らず、幅広く新事業を一緒に創っていく手法について日々ディスカッションしておりますので、ご興味がある方はぜひお問い合わせください。