資金調達には欠かせない!事業計画書の作り方

資金調達に際して、最も重要になる書類が「事業計画書」です。事業計画書が明確で説得力の高い内容でなければ、資金調達は困難になってしまいます。この記事では、資金調達に欠かせない事業計画書の記載内容や、書類作成におけるポイントなどを解説します。

資金調達に必要な事業計画書とは

事業計画書とは、頭の中で思い描いている事業内容を具体的に見える形にした資料です。どのような事業を展開していくかだけでなく、実現するための行動計画も併せて記入することで、自分以外の他者に事業の全体図を理解してもらう助けになります。また、事業計画書を作成することによりアイデアが整理されるため、不足している部分や修正すべき点などが明確になることが事業計画書を作成するメリットです。

事業計画書は資金調達の際に提出が必須となることが多いです。金融機関や投資会社では、融資・出資の可否を検討するに当たり、その事業の実現可能性や返済能力を重視します。そのため、いかに素晴らしい事業内容であるかを説明するだけでなく、現実的で無理のない計画であることを裏付けることも重要です。

事業計画書に必要な内容は目的によって異なる

事業計画書には決まったフォーマットはありませんが、事業内容を相手に正しく理解してもらえるよう、客観的にわかりやすくまとめることが大切です。もし、どのように書いていいかわからない場合は、インターネットで公開されている実際の企業の実例を参考にしてみるのも一つの方法です。

記載する項目は業種や事業の目的によって異なります。今回の記事では、どのような業種・事業であっても基本的に記入すべき項目をピックアップしました。融資、出資どちらのの審査でも重視される項目なので、明確に内容が伝わるよう資料などを揃えておきましょう。

事業計画書の作成方法【記入すべき基本項目】

以下のリストは、事業計画書を作成する際、どんな業種であっても基本的に必要な項目です。特に融資や出資を受ける目的で提出する場合は、事業が実現可能であるかどうかを審査する核の部分になるので、内容を明確に記載することが重要です。

● 社名や住所などの基本情報
● 経営者の経歴
● 理念や目的
● 事業の概要(ビジネスモデル)
● 自社の強みや商品・サービスの特徴
● 市場環境や競合の状況
● 将来的な目標
● 資金使途
● 収支計画

これらの項目にプラスして、事業の種類に応じた資料を用意し、グラフや表など視覚的に理解しやすい工夫を盛り込むと事業計画の説得力を高める効果があります。項目ごとに、どのような内容を記載すればよいのかをまとめたので、事業計画書を作成する際の参考にしてください。

社名や住所などの基本情報

事業内容を詳しく説明する前に、まずは事業の基本情報(プロフィール)を記載します。

● 名称など
商号、屋号、社名など、事業を起こす際の名称と、創業者の氏名、役員がいる場合は役員名などを記載します。ウェブサイトがある場合はURL、従業員数なども入れると丁寧です。

● 住所など
事業所の所在地、代表電話番号、FAX番号、代表メールアドレスなどです。未定の場合はその旨を記載します。

● 事業形態
株式会社か個人事業かといった事業の形態を記載します。株式会社の場合は株主構成なども明記しておくと良いでしょう。

● その他
以上に加え、特別に付け加えることがあればまとめて記載しておきます。

経営者の経歴

経営者(創業者)の経歴は、事業の成功を推察する上で大きなポイントです。以下の内容をしっかりアピールできるよう、事業計画書を作る時点で、これまでの経歴やスキルを整理してみることをおすすめします。

● 経験や人脈
経営者が過去に勤めた企業名、職務内容など、仕事の経験を記載します。就職活動における「職務経歴書」に当たる部分で、時系列にまとめて「略歴」とすると読みやすくなります。また、これまでの仕事で得た人脈があることも信用力を高める助けになるので記載しておきましょう。複数の会社や組織に属している場合はそれらも記載することでポテンシャルを伝えることができます。

● スキルや資格
経験した仕事や勉強により取得した資格やスキルがある場合は、大きなプラスのポイントになります。特に、今から始める事業に関連するものは、重点的にアピールするよう心がけましょう。国家資格や知的財産権、特許などを所有する場合は、種別や資格の番号なども正確に記載します。

理念や目的

事業における経営者の理念は重要なポイントです。意欲を伝えることはもちろんですが、社会的な意義を理論的に理解してもらえるよう、動機や使命などの項目別に分けて記載するとわかりやすくなります。

● 事業の動機
なぜその事業を志したのか、理由を明確にします。「お客様にこのように喜んでもらいたい」「前職で培ったスキルを活かしたい」「前職においてマーケットの課題を見つけたので解決したい」など、なるべく具体的な動機を示しましょう。

● 社会的な使命
事業を通じて社会に貢献できることや、その事業でないと提供できないものなど、社会的な使命感は共感につながります。また、その事業が社会の問題点や不足点をフォローするものであれば、より事業の意義が高まります。

理念やビジョンは、事業に対する経営者の情熱を表すので、金融機関や投資会社が重視する項目です。事業の目的がしっかり伝わるようアピールしてください。

事業の概要(ビジネスモデル)

事業の概要(ビジネスモデル)は、建築では設計図にあたる重要項目となります。簡単に言うと、どのような商品やサービスを用いて収益を得るかという事業の仕組みを説明するものであり、記載のポイントは「客観的に書く」「具体的に書く」の2点です。どんなに優れた計画でも理解されないと意味がないので、図やグラフなどを上手に使って読む人に正しく内容を把握してもらうことが大切です。

● どのような商品やサービスを提供するのか
● どのような方法で提供するのか
● 顧客のターゲットはどの層か
● 販売計画はどのようなものか
● 設備や投資はどれくらい必要か
● それらを実現するための流れ など

また、事業を進める中で起こりうるリスクを想定し、回避する手段も講じておくと信頼性が高まります。

自社の強みや商品・サービスの特徴

ビジネスプランを成功させる根拠となるのが、「自社の強み」「商品・サービスの特徴」です。一般的にセールスポイントや差別化要素と言われるもので、顧客にとっての魅力ですが、どんなに性能の高い商品や良いサービスであっても競合する同業他社が多ければ、ただ新規参入しても成功させるのは難しいでしょう。そこで、自社ならではの独自性を打ち出すことが必要です。

● 自社にしか提供できない商品やサービス
● 競合する同業他社が少ない
● 自社を利用することで顧客への特典がある
● 知的財産権の取得状況
● 値段や質など、他社と比較して優位 など

セールスポイントは大まかに伝えるのではなく、例えば「自社農場で無農薬栽培をした野菜を使用しているため安全性が高い」「独自の新技術を使用したオリジナル商品を製造」など、なるべく具体的に独自性や優位性を示すと、読む人が理解しやすくなります。

市場環境や競合の状況

商品やサービスの優位性を語る上で欠かせないのがマーケティングです。市場の環境や競合する他社の状況を分析することで、ビジネスチャンスを的確に判断できます。逆に事業計画におけるマーケティングが不十分な場合、戦略について不安な印象を持たれてしまいかねません。どのような業種であっても、以下のリストの項目にある分析や研究はしっかり行うことが肝心です。

● 市場のニーズや流れを探る
● 競合他社の状況、動きを研究する
● 売れ筋、顧客のデータを分析する
● 市場の将来的な展望を予測する
● 以上から自社の独自戦略を導き出す など

事業計画書の作成においては、市場や業種が競合する他社を数社選んで、分析・比較したデータを記載すると現状が明確になります。さらに、その状況下で自社が事業に参入した際の優位性を語ることができれば、説得力が格段に高まります。

将来的な目標

事業は継続することに意義があるので、起業時の計画だけでなく、将来にわたる展望も必要です。事業計画書の中でも事業の将来性は必須の審査項目となるため、丁寧に作り込んでおきましょう。ただし、漠然と「いつかこうしたい」ではなく、具体的に「何年後」という計画を示すことが求められます。あまりにも長期では現実味が薄れるので、創業時~中期で計画を練っておくと良いでしょう。また、テクノロジーを軸とする事業の場合は、技術開発の計画をより具体的に把握できる「テクノロジー・ロードマップ」を作成しておくことも重要です。

● 創業当初
準備段階から創業を経て、事業が軌道に乗るまでの計画です。事業をどのような規模でスケールさせていくのかなど記載しましょう。

● 5年~10年後
会社・事業を更に発展させるための計画や、業績の予測を設定します。また、それに至る行動予定や見通しの裏付けなども用意しておきましょう。

● さらなる目標
「売上額が一定金額を超えたら〇〇をする」「〇年後には〇〇領域に展開する」など長期の目標がある場合は、具体的な数字と行動予定を提示します。

資金使途

資金使途は主に以下の2つに分類されます。

● 設備資金
事業を開始・拡大するときに必要な、事業所や店舗、通信環境の整備やプロダクト開発などに使用される資金です。事業を計画するに当たっては、設備資金がいくら必要になるか算出して記載することが重要になります。

● 運転資金
事業の開始後、商品を製造するための材料の仕入れ、人件費や経費の支払いなど、日々の業務を行うために必要になる資金です。

事業計画書では、これらの資金を「どのような方法で調達するか」や「どのように返済するか」を明確にしておくことが求められます。これは大まかな予測ではなく、実際に見積もりを取ったり、金利の計算式に当てはめたりすることで、根拠のある数字を出しておくことが必要です。

以上の資金に関しては、まず事業全体の資金設計図とも言える「資本政策」をしっかりと練り上げたうえで考えることが重要です。資本政策は将来、株式公開をする際にも必須で、「資金調達」と「株主構成」のバランスを上手に取ることが必要です。

収支計画

「その事業でいくら収益が出るのか」を意味する収支計画は、計画というより予測を記載する項目です。しかし、綿密に計画を立て戦略を練ることで、予測と現実の差を縮めることが可能になります。事業計画書に記載する際には、2つのポイントに留意してください。

● 細かく損益計算する
事業の内容とマーケティングで得た状況データを突き合わせ、どれくらいの収益が期待できるか計算するのが「売上予想」です。そして、予想にコストを入れて実際のお金の出入りを予想したものが「損益(収支)計算予想」になります。この計算をいかに丁寧に行えるかによって予測の精度が変わります。

また、事業計画書には計算した結果だけを記載するのではなく、客単価や仕入れ原価、経費や返済金などを入れ込んだ計算式を記入すると、より詳しい収支の予測が把握できるため審査の際の信頼性につながります。

● お金の流れを明確に
収支に関する理解を深めるために、フローチャートを利用するのも良い方法です。フローチャートとは、人物や事象の相関性を図式で表したもので、自社と資金について関連性のある取引先や金融機関などを書き出し、矢印でつないでお金の流れを示します。このような図を取り入れることにより、収支の仕組みが可視化されてわかりやすくなります。

VC・CVC向けの事業計画書作成のポイント

「VC」とは「ベンチャーキャピタル」の頭文字の略で、成長が期待できる未上場企業に対し、ハイリターンを狙って資金を融資する投資会社(ファンド)のことです。「CVC」とは「コーポレートベンチャーキャピタル」の略で、投資を主業としない企業がスタートアップに出資し、事業シナジー(ストラテジックリターン)を創生する狙いがあります。

VCやCVCの投資は、株式公開後の売却額との差額(キャピタルゲイン)や事業とのシナジーである戦略的リターンを期待して行われるため、基本的には無担保かつ返金義務がないのが特徴ですが、それだけに事業計画書に関しても一般の金融機関とは着眼点が違います。その中でも特に強くアピールしておきたい2点をピックアップしました。

● 将来性に期待させる
VCやCVCにとって、その事業がどれだけ成長できるかは、収益や事業シナジー構築に大きく関わります。綿密な計画を立て、早期に事業を軌道に乗せられることをアピールしましょう。また、独自のプロダクトやテクノロジー(コアコンピタンス)を明確化することも重要です。特にCVCにおいては、そのCVCの親会社や関係会社などの既存事業や将来構想へのシナジーを重視することが多く、そのポイントを投資担当者に確認することも重要です。
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● 収益性の根拠を明示
社会的に意義がある事業でも、収益性が低いものはVCやCVCの対象となることが難しい場合があるため、収益を得られる根拠を用意しておきましょう。VCとCVCは共に「ハンズオン」と呼ばれる経営支援を出資先に行い、収益向上をサポートする場合もあり、収益化に必要な要素を整理しておくことも重要です。

まとめ

資金調達においてとても重要な「事業計画書」ですが、いかに内容を充実させ、資金調達につなげるかが経営者としての腕の見せどころです。ベンチャー企業・スタートアップ企業ではそのステージや、対象としている業界などで記載内容は変動しますが、今回はその中でも共通して記載する項目をまとめてみました。

内容のカスタマイズがあったとしても、他者に読んで理解してもらうと書面だということを念頭に置き、具体的で説得力のある事業計画書を作成しましょう。自分のアイデアや思考を整理するためにも有効なので、日々資料のアップデートをおこなっていくことをおすすめします。

凸版印刷では、ベンチャー企業・スタートアップ企業様との資本業務提携によるシナジー創出を目指しております。新事業を一緒に創っていくベンチャー企業・スタートアップ企業様と日々ディスカッションしておりますので、ご興味がある企業様は以下のリンクからお問い合わせください。
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