スタートアップ×パートナー企業×凸版印刷の「事業実証」オープンイノベーションプログラム「co-necto」が23年度の募集を開始【応募締切7月31日まで】 

凸版印刷株式会社はCVCだけでなく、多方面からスタートアップとのオープンイノベーションに取り組んでいます。その一つが、九州・関西・中四国事業部が主体となって運営しているオープンイノベーションプログラム「co-necto(コネクト)」です。その特徴は「事業実証」にフォーカスしていること、そして同地域の地場企業と連携することで様々な分野の「事業実証の場」を用意していることにあります。

そんなco-nectoが、「カーボンニュートラル」「次世代ヘルスケア」「ディープテック」など11項目を募集テーマに掲げ、2023年7月から第7期の応募を始めています(期限は7月31日)。

そこで今回はco-nectoの担当者に、co-nectoの概要や魅力、パートナー企業の参画理由とスタートアップへの期待、これまでの協業事例などについて語っていただきました。

スタートアップ企業・パートナー企業・凸版印刷の3社で事業実証を目指すプログラム

── co-nectoの概要を教えて下さい。

石本(プロジェクトマネージャー):

co-nectoは凸版印刷の九州・関西・中四国の関西以西3事業部が運営するオープンイノベーションプログラムです。スタートアップ企業と凸版印刷だけでなく、九州・関西・中四国地盤の企業に「パートナー企業」として参画いただき、3社間で連携を目指すことも特徴となっています。

今回はTOPPAN CVC JOURNALでの取材なのでCVCとの違いを先に説明しておくと、co-necto自体に出資機能はありません。co-nectoは資金面ではなく、「事業実証」として事業面からスタートアップ企業をサポートしながら共に進めていく共創プログラムです。

co-necto プロジェクトマネージャー  石本 康久|ISHIMOTO Yasuhisa

凸版印刷株式会社 九州事業部 BI営業本部 DX推進部 ソリューション開発課 課長

 

薄(運営事務局リーダー・九州エリア担当)

co-nectoは、2017年から形を変えつつ毎年実施しており、今年で7年目の開催となります。当初は入賞企業に賞金を出すビジネスコンテスト形式だったのですが、なかなか事業化やスタートアップ企業との連携に繋がらなかったのが課題でした。その反省を踏まえ、4年前から実証型のプログラムへと姿を変えています。

co-necto 運営事務局リーダー 薄 俊介|SUSUKI Shunsuke

凸版印刷株式会社 九州事業部 BI営業本部 DX推進部 ソリューション開発課

 

薄(運営事務局リーダー・九州エリア担当)

また凸版印刷も印刷業をはじめ幅広い事業領域をもっているとはいえ、すべての領域がカバーできているわけではありません。それならばせっかく我々は九州・関西・中四国の企業と関係性があるのだから、パートナー企業の力を借りて、多くのスタートアップ企業に関わっていただいたほうがいい。そう考えて、パートナー企業も交えた3社間で事業実証するプログラムとしています。

co-necto 2023に参画する主なパートナー企業

 

薄(運営事務局リーダー・九州エリア担当)

凸版印刷としては、採択されたスタートアップのサービスを我々のお客さまに販売していくことが目的の一つです。とはいえ単に既存のスタートアップ企業の技術やサービスを代理販売するのではなく、普段から凸版印刷とお取引のある企業様にマッチするようにアップデートしたソリューションにして販売していきたいと考えています。それが当然我々の新たなビジネス機会になりますし、もちろんスタートアップ企業の成長にも繋がるというわけです。

── パートナー企業はどういった理由でco-nectoに参加しているのでしょうか。地域ごとの特性はありますか?

薄(運営事務局リーダー・九州エリア担当)

新規事業に取り組んでいる会社は九州でも増えていますが、とはいってもゼロイチの構築は我々も含めて簡単ではありません。そこで新規事業創出に関心のある企業にco-nectoへ参画いただくことで、その足がかりにしていただきたいと考えました。スタートアップ企業にとっても、パートナー企業の参画によって凸版印刷単独よりも実証フィールドが拡張されることは望ましいことですしね。

米田(関西エリア担当):

パートナー企業に限らずですが、関西では既にオープンイノベーションや新規事業開発に取り組んでいる企業は少なくありません。ただ、自社でオープンイノベーションなどに取り組んでいると、どうしても本業に関連するスタートアップ企業との出会いが多くなってしまうようです。それ自体は喜ばしいことですが、新規事業担当としてはもっと幅広い会社と出会いたいというニーズがあり、それを叶える一環としてco-nectoに関心をもっていただいています。

co-necto 関西エリア担当 米田 七海|YONEDA Nanami

凸版印刷株式会社 西日本事業本部 関西TIC コミュニケーションデザイン部 メタバース推進チーム

 

岡(中四国エリア担当):

中四国は広島に本社のある自動車会社をはじめ、全国と比較しても製造業の割合が多いんです。そのためパートナー企業としては、そういったモノづくりの発展を支援するインフラ、金融機関、メディアが多くなっており、彼らも新規事業の種を探しています。

co-necto 中四国エリア担当   裕樹|OKA Hiroki

凸版印刷株式会社 中四国事業部 企画販促本部 販売促進部 CXデジ防チーム

 

薄(運営事務局リーダー・九州エリア担当):

福岡には「七社会」と呼ばれる誰もが知っている企業があるのですが、そのほとんどがco-nectoに参画いただいています。そのため、九州地域の販売・インフラネットワークにはかなりアクセスしやすくなっているはずです。

共通テーマに各社の個別テーマを加え、幅広い課題に対応

── co-nectoの応募テーマを教えて下さい。

薄(運営事務局リーダー・九州エリア担当):

詳細は以下の画像とco-nectoのホームページをご覧いただきたいのですが、募集テーマとしては以下の11テーマを選定しました。凸版印刷やパートナー企業が共通して関心を抱いている領域を中心に、ジェネレーティブAIといった近年トレンドとなっているテーマを設定しています。

co-necto 2023の募集テーマ

 

薄(運営事務局リーダー・九州エリア担当):

もしかしたら、中には凸版印刷との関係がわかりにくいテーマがあるかもしれません。例えば「行政DX」は案件の性質上あまり知られていないかもしれませんが、凸版印刷は全国の自治体と仕事をしているのです。特に関西以西では、BPO業務やマイナンバー関連の行政DXにかなり注力しています。窓口業務をデジタル化するためのサービスを展開するスタートアップ企業がいれば、ぜひお話したいですね。

また「ジェネレーティブAI」は今年からテーマに設定しました。凸版印刷としてもパートナー企業としても関心が高い分野ですし、社会的にも話題となっていますからね。これらに関連するスタートアップ企業から自社の技術を使ってこういうことができますよという提案も是非伺いたいです。

「パートナー共創」というテーマも新しく設定しました。前述の通りco-nectoには何社ものパートナー企業に参画いただいていますが、各社の関心事は当然共通テーマだけではカバーしきれません。そういったテーマについては各社から個別のテーマを収集し、募集テーマとしています。

米田(関西エリア担当):

例えば、関西のアストラゼネカ社は「診断・治療」、奥村組社だったら「陸上養殖」といったテーマを挙げています。二十数社もの会社が何個も個別テーマを設定しているので、共通テーマと併せれば全く関連のないスタートアップ企業というのはあまりないのではないでしょうか。

また先程も申し上げたように、パートナー企業の中には本業以外のスタートアップ企業との出会いを欲している企業も少なくありません。スタートアップからは「A社とこういうことをしたい」と応募いただきますが、それを見たB社が「それができるならうちとこういうことをしたいのだけど……」といったように、逆オファーするケースもあります。ぜひ多様なスタートアップ企業がco-nectoに関心を持っていただけると嬉しいです。

プログラムから生まれた協業事例

── 昨年のプログラムから生まれた事例を教えて下さい。

石本(プロジェクトマネージャー):

まずは株式会社キャッシュフローリノベーションの事例です。同社は足首センサーやビデオカメラを用いて、人の動きや作業を可視化するツールを開発しています。特許などの独自技術をもち、単にツールを提供するだけでなくコンサルティングも手掛ける点が強みです。

キャッシュフローリノベーションとは、凸版印刷の福岡工場で事業実証を行いました。いい結果が出ているので、今後彼らの持つ技術を凸版印刷のお客様に合うようにカスタマイズし、サービス提供していく予定です。同社は技術ドリブンな会社なので、営業面で凸版印刷が音頭を取ることは、彼らにとってもメリットがある言っていただいています。

 

── これまでco-nectoに参加したスタートアップ企業やパートナー企業からの感想を教えて下さい。

岡(中四国エリア担当):

スタートアップ企業からは伴走支援を評価していただくことが多いです。自分たちでいうのもなんですが、かなり丁寧に伴走するようにしていて、プロジェクトマネジメントは凸版印刷のメンバーで担当することが多いですし、例えばスタートアップ企業ではノウハウが少ないであろう自治体への許可取りといったことも、凸版印刷のノウハウを活かして対応しています。

米田(関西エリア担当):

パートナー企業の中には独自にオープンイノベーションへの取り組みをしている企業もありますが、それだけだとどうしても視野が狭まってしまうので、横のコネクションを欲している企業が多いと感じています。そこでco-nectoでは、交流会なども含めて横のつながりを取れるようにしました。コロナ禍も落ち着いてきたこともあって、今年はエリアを越えて対面で交流の機会を設けていきたいですね。

薄(運営事務局リーダー・九州エリア担当):

そうやってパートナー企業同士でも繋がりをもっていただくと、スタートアップ企業にとってもまとめて相談できるというメリットが生まれます。なのでパートナー企業同士の連携はスタートアップ企業にとってもいいことですね。

またco-nectoでは、実証実験にかかる費用の最大3分の2を凸版印刷とパートナー企業が負担します。案件にもよりますが、平均支援額は約200万円。また実証実験の開始や成果についても、凸版印刷やパートナー企業からプレスリリースなどを通して情報提供するので、ニュースバリューが大きくなることを喜んでいただけることも多いです。

応募は7月中。全国・全世界のスタートアップ企業の皆様、九州・関西・中四国で事業実証しませんか?

── 採択までの流れを教えて下さい。

薄(運営事務局リーダー・九州エリア担当):

応募期間は7月3日から31日までの約1ヵ月です。この間にエントリーシートと選考資料の用意をお願いしています。書類選考である1次選考を経て、2次選考をオンラインピッチで9月中旬に開催し、採択結果を10月中旬に通知する予定です。なお、前回までに応募いただいたスタートアップ企業が再度応募することも可能となっています。2次選考を通過したら、事業実証フェーズです。案件によりますが、実証実験期間の目安は23年度中(2024年3月まで)が目安。スタートアップ企業はパートナー企業や担当者をつないで終わりではなく、co-nectoの担当がつき、プロジェクトマネジメントなどの面から伴走します。

 

薄(運営事務局リーダー・九州エリア担当):

co-nectoは九州・関西・中四国で運営しているプログラムですが、日本全国、また海外からも応募いただけます。JETROやKOTRA東京から海外に情報発信していただいていることもあって、2022年度は約20%が韓国を中心とする海外スタートアップ企業からの応募でした。スタートアップ企業のステージは特に定めていませんが、co-nectoが事業実証を目的とするプロジェクトの性質上、サービス・プロダクトが完成、もしくはテストできる段階が望ましくなっています。詳細はco-nectoのホームページからご確認下さい。

 

石本(プロジェクトマネージャー):

色々と説明させていただきましたが、co-nectoは関西以西で幅広く事業実証ができるプログラムとなっています。可能な限り柔軟に幅広く受け皿をもちたいと思っていますので、多くのスタートアップ企業に応募いただけたら嬉しいです。

 

スタートアップの皆さま、

積極的なご応募、めっちゃお待ちしています!

 

 

(執筆:pilot boat 納富 隼平)