限られた経営資源を効率的に配分するためには、投資ポートフォリオの戦略策定が重要です。とはいえ、投資ポートフォリオ戦略の内容やポイントを理解していないと実施は困難でしょう。
今回は投資ポートフォリオ戦略の概要やメリット、検討ポイント、重要な考え方について解説します。
ポートフォリオとは
ポートフォリオという言葉は、主に「組み合わせ」という意味で用いられます。特に金融や投資の世界では、金融商品の組み合わせや資産構成のことを指します。金融や投資におけるポートフォリオは、構成要素それぞれのリスクやリターンを考慮して作成します。
投資ポートフォリオの作成には、以下のメリットが挙げられます。
- リスク分散
- 事業の成長性や安全性、収益性を可視化できる
- 注力すべき事業および撤退すべき事業を把握できる
- 経営資源を適切に配分できる
CVCにおいても、投資ポートフォリオのマネジメントは重要です。投資ポートフォリオをマネジメントすることで、投資方針の明確化が期待できます。
投資ポートフォリオを組むメリット
続いて、それぞれのメリットについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
リスク分散
投資ポートフォリオを組むことで、リスク分散効果が期待できます。なぜなら1社に集中投資するよりも、複数の企業に投資したほうがリスクを抑えやすいためです。
投資の金言として「卵をひとつのかごに盛るな」というものがあります。卵をひとつのかごに盛ると、かごを落とした際に卵はすべて割れてしまいますが、かごを分けておけば失う卵は1つで済みます。投資においても同様の考え方ができ、1つの投資先の価値が暴落しても、他の投資先の価値が保たれていれば資産を守れます。
また、分散投資は金融危機へのリスクヘッジにもつながります。2020年のコロナショックのような金融危機は将来も起こる可能性がありますが、投資ポートフォリオを活用することで、投資先すべてが金融危機の影響を受けてしまうというリスクを抑えられます。
事業の安全性、成長性、収益性を可視化できる
投資ポートフォリオを作成し俯瞰的に把握することで、投資先の事業についての安全性、成長性、収益性を可視化することが可能です。これらを明確にすることで、今後より大きなリターンが期待できる事業に優先して投資できるようになります。
経営資源を適切に配分できる
事業予算を始めとした経営資源には限りがあります。そのため、投資パフォーマンスを向上させるためには、経営資源の適切な配分が求められます。
そのような意味では、投資ポートフォリオの重要性は高いと考えられます。なぜなら投資ポートフォリオを組むことで、状況に応じて柔軟に資産配分を適正化できるためです。
例えばコロナ禍においては、停滞しがちなオフライン事業への予算を削減し、代わりに需要が拡大しやすいオンライン事業に優先して資金を割くなどといった判断が要求されます。このような場合に投資ポートフォリオを作成しておくことで、現時点でどの事業に予算を割き過ぎていて、どの事業により大きな資金を投下すべきかという判断を下しやすくなります。
投資ポートフォリオの検討ポイント
続いて投資ポートフォリオの検討ポイントおよび作成手順について解説します。
①自社理解
まずは自分の会社が何をしてきたのか、今何をしているのかを把握します。その上で、リスクが高い事業、低い事業などを網羅します。
もちろん、リスクの高低についても、各社の事業内容によって大きく変わってくる部分でもありますので、それを踏まえた自社理解が大切です。
自社が保有する事業アセットと、外部環境を分析することで、どの事業に優先してリソース配分すべきか明確になります。
②注力領域の策定
自社理解ができたら、さまざまな要因と照らし合わせながら、注力領域を検討します。経営資源は限られているため、注力領域を定めて効率的に配分する必要があります。
注力領域の策定に当たっては、いくつか方法がありますが、とくにCVCでは事業会社とのシナジー効果を根拠に策定していくことが多いでしょう。
また他にも、ベンチャー企業のステージによって投資方針を定めているところもあります。とくに、VCではシード期のベンチャーを投資対象とする会社もあり、レイター期のステージと比較すると投資リスクも相対的に高くなる傾向にあります。事業会社とのシナジー効果について考えるならば、ある程度プロダクトやサービスが市場に認められるようになってきたステージで投資することで協業などの構想を描きやすくなることもあります。
このような検討を通して、自社が注力すべき領域を策定していきます。
③投資先選定のしやすさ
注力すべき領域を策定し終えたら、その領域の企業に投資可能か、自社の現状の投資ポートフォリオに対してどう埋め込んでいけば良いかを検討しましょう。その際は1つの領域に注力するのか、業界理解を目的として複数の領域に進出するのか、自社の状況に合致した戦略を採用することが望ましいです。
必ずしも複数の事業に手を伸ばすことが正しいというわけではないため、自社の状況に応じた適切な判断が求められます。
④事業創出のための他領域への投資
CVCにおいては、新規事業の創出をメインとするケースも多く存在します。そのため、ある程度成熟した事業に投資するよりも、成長余地を大きく残したベンチャー企業に投資するケースもあります。1社に莫大な資金をつぎ込んで大切に育てていくことも大事ですが、さまざまなベンチャー企業に投資することで、新しい市場機会を探索していくのも1つの手段として挙げられるでしょう。
まとめ
投資ポートフォリオ戦略の策定は、CVCにおいても大切な要素の1つとなるでしょう。そうした中で、CVCにおける投資ポートフォリオ戦略の考え方では、特に以下のポイントが重要です。
- 事業ごとのターゲットや独自の強みを明確にする
- 経営資源を優先順位の高い事業に回す
- 事業の状況によっては撤退やM&Aなどを検討する
是非、当社の取り組みについて興味がございましたら、TOPPAN CVCまでお問合わせください。