新型コロナウィルスの蔓延は、日本はもちろん世界中の経済に大きな影響を及ぼしました。事業継続が難しくなり、今現在、存続に向けて資金調達を検討している企業や経営者様もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、新型コロナウィルスの影響によるこれからの国内外の経済状況の変化と、それが企業の経営や資金調達にどのような影響を及ぼすのかの予測をまとめてみました。
新型コロナによる日本経済の変化
新型コロナウィルスの流行のため、令和2年4月7日から5月6日まで、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府、兵庫県、福岡県に緊急事態宣言による外出自粛令が発令されました。さらに4月16日以降は対象区域が全国になり、大幅な自粛によって日本経済は激しく悪化したのです。感染を防ぐために人々の外出が減少したことから、個人の消費が著しく低くなったことをはじめ、国内生産や輸出、輸入が大幅に減少しました。
こういった影響から、売上がどんどん下がってしまい破綻してしまう企業のニュースも日々耳にするようになりました。企業や個人事業主様の事業を支えるために設けられた「持続化給付金」によって支えられたケースがある反面、給付の遅れにより事業存続が不可能となってしまったケースもあります。
緊急事態宣言が解除された6月はわずかに景気の回復が見られたのですが、また7~8月に感染者が急増しており、緊急事態宣言こそ発令されなかったものの、外出などの自粛は継続されました。 そのような中、緊急事態宣言によって倒産した企業や解雇された従業員の多くは、再雇用すら目処が立たない状況です。コロナによって収入が激減した世帯は、これからの1〜2年の間も収入の減少が続くと言われています。また、今後も国や自治体による中小企業への支援が必要であり、日本経済の回復にはたくさんの課題があるため、景気回復には数年を要するとも考えられています。
新型コロナによる世界経済の変化
新型コロナウィルスにより世界経済は第二次世界大戦以来の景気後退に陥っています。日本を含む先進国では国内の需給が混乱し、ひとりあたりの生産量が大幅に減少しました。IMF(International Monetary Fund、国際通貨基金)の予測によると、2020年の経済成長率は先進国で約5%減、新興国で約3%減とされており、世界銀行もまた60年ぶりに発展途上国の経済成長が後退するだろうと予測しています。ここまで世界経済が悪化するとすぐに回復することは難しく、長くその影響を引きずるだろうと言われています。
【参考】
国際通貨基金 2016年6月改訂見通し
世界経済の回復に向けて各国がさまざまな持ち直し策を取っており、5月以降は少しずつ回復傾向にありました。しかし、9月以降は回復スピードがゆるやかになると言われています。その原因として、まず5月末までに目標としていた経済活動の再開をクリアできなかったことが挙げられるでしょう。
もうひとつの原因は、現段階でワクチンや有効な特効薬の普及に時間がかかると予想されていることから、感染抑制のために人々の行動が抑制されてしまう状況が続いていることが挙げられます。また、アメリカによる中国に対する金融的制裁が行われた場合、世界経済の回復はさらに遅れると考えられているのです。
新型コロナのVC・CVCへの影響
新型コロナの影響により、VCやCVCによる投資は停滞すると考える方も多いようです。実際にVCやCVCは、新型コロナの影響によって投資の引き締めを行ったのでしょうか。
スタートアップの資金調達に与える影響
結論から言うと、2020年4~6月は、海外のVCと国内のCVC投資実行件数は前年度と比べて増加 しており、景気回復を見越して積極的に活動しているといえます。スタートアップ企業の支援や新型コロナウィルスに関して社会貢献を行う企業に対する支援を政府に求め、具体的な支援を行う動きを見せています。
また、新型コロナウィルス禍であっても前年と同等あるいはそれ以上の投資を行っていこうと考えている投資家は全体の半数を占めているのです。 実際のところ、新たに設立されたファンドも多数あり、その理由としてコロナ禍により株価が下がったことを受けて資金を集めようとする企業が増えると予想されたことなどが挙げられます。
一方で、CVCではスタートアップ企業への投資が減少し、2020年1~3月にかけては投資金額、件数ともに大きく下がっており、 一部の報道ではその後も新型コロナウィルスによる影響は続くと見られています。その反面、アジアの大手CVCの一部は大規模な投資を行っており、CVCによってそのスタートアップ投資を行う企業とそうでない企業の選別が強くなっているとされています。
【参考】
一般社団法人ベンチャーエンタープライズセンター 直近四半期投資動向調査2020年第2四半期
デロイトトーマツベンチャーサポート株式会社 Withコロナ時代のイノベーション戦略
@DIME 積極的な投資家は?国内スタートアップの資金調達状況、昨年と比べて企業数は減ったものの調達額は増加
今後の資金調達の方向性とトレンドの変化
企業の資金調達方法においては、社債や株式の発行などもこれまでと同様に行われているようです。また、現在国や自治体による新型コロナウィルス関連の事業支援制度が充実しており、企業の経営状況や勤務体制などに応じた融資や助成金制度が利用しやすくなっています。
今後もVCやCVCによるスタートアップへの投資は、積極的に行われるものと思われますが、コロナ禍でも将来性が見いだせている企業など、出資を行う企業を見極める視点はこれまでと変わってくると予測されます。新型コロナウィルスの感染拡大後にVCやCVCから資金を調達した企業の中には、自動運転の研究を進めている企業やライドシェア事業を展開する企業などが存在しており、いずれも今後の技術進化への期待が資金調達成功の理由のひとつと考えられます。ほかにもアプリを用いた証券取引サービスを提供する企業など、将来性が光る企業が資金調達に成功しています。
また、新型コロナウィルスに特化した医薬品や医療機器を開発しているベンチャー企業など、「コロナと戦う」企業への支援にも積極的な支援が見られます。そのため、物流やメディカルなど新型コロナウィルスに対する社会貢献を行うベンチャー企業に対しては、今後も更なる継続的な支援が期待できるでしょう。
まとめ
新型コロナウィルスの影響により、VCやCVCの支援活動の増減はVCやCVC、また支援を求める企業の状況によって異なると言えます。しかし「新型コロナウィルスの影響で景気後退が予想されるから投資は控えよう」という考え方は違う価値観を持つ投資家も多いようです。企業の事業内容や将来性によっては、これまでと同様どころか、それ以上の支援を受けることも可能となると予測されます。
凸版印刷では、新型コロナウィルスの流行前と変わらず、ベンチャー・スタートアップ企業への出資活動をさせて頂いております。
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