ベンチャー投資における投資契約のアレコレ|契約の内容や注意点

ベンチャー企業が投資会社から資金の提供を受ける際、重要になるのが「契約書」です。出資に関する契約は変更が難しいものも多く、後々までの会社経営に関わってきます。まずは契約の前に入念な確認を行い、トラブルを未然に防ぎましょう。本記事では、出資に際して取り交わす契約書の代表的なものを、詳しく説明していきます。

「契約」が重要である理由

本来、会社法では総数引受契約書を交わして登記すれば、その他の契約書がなくても有効とされます。実際、ひと昔前は投資契約を締結するだけの投資が大半でした。しかし、近年ベンチャー企業への投資条件が複雑な設計になったことや、Exitの際のトラブルなどが増加しているため、多くの会社で複数の契約書を取り交わすようになりました。
契約書はベンチャー企業側にとって、より有利で円滑な資金調達ができるという安心感があります。また、投資家の側にも前提条件以上の権利を担保できるので、双方にとってメリットがあると言えます。Exitでは、全株主、従業員の利益を確保するという意味でも、資金調達における契約の存在は非常に重要です。

ベンチャーが投資を受けるときの投資契約

近年ベンチャー企業への投資は条件設計が複雑化し、それに伴い契約の重要性も高まっています。本記事では、投資にまつわる契約の中でも代表的な4例をピックアップし、それぞれに内容や注意点を解説していきます。ただし、これらの契約に関しては法的に決まったフォーマットはなく、会社によって内容に差異があります。自社の利益が損なわれないよう、締結前にリーガルチェックを徹底するようにしましょう。

● 投資契約書……投資実行条件や出資者に割り当てる株式の条件を定める
● 株主間契約……出資後の投資家と企業、創業株主間における権利や義務を定める
● 財産分配契約……株主間契約の中で買収に関する条項を抜き出したもの
● 業務提携契約……企業間で業務を提携し、技術などを共有する際の条件を定める

投資契約とは

ベンチャー企業が投資家からの資金調達を受ける際、株式の発行概要や払い込みの実行条件など、最もベーシックな部分を取り決める契約です。当事者は、投資家(VC、CVCなど投資会社や個人投資家)とベンチャー企業、創業株主に限られます。なお、投資契約という名称以外にも、株式引受契約や社債引受契約、取得契約などと呼ばれることもあります。
投資契約は当事者の範囲が限定されるため、多くの場合は投資会社と創業株主間の交渉によって柔軟に条件を盛り込むことができます。そのため、契約前に法律家のリーガルチェックを受け、契約内容の確認を行う事を推奨します。

投資契約の内容

投資契約書の内容は、会社により様々な条項が盛り込まれるため一般的な決まりはありませんが、株式の概要や発行条件、変更やトラブル時の事前取り決めなどがメインとなります。主な記載項目をリストアップしました。

● 株式の種類(普通株式、優先株式の種別その他)
● 株式の発行数と価格など
● 払込期日(出資金が実際に支払われる日)
● 資金の総額と用途(使途の制限)
● 表明保証
● 秘密保持義務
● 投資実行までに違反が生じた際の条件
● 財務状況の報告
● 重要な変更時における、出資者の承認事項規定
● 投資家の優先引受権
● 上場申請や出資者が株主を辞めるなど契約終了時の取り決め など

なお、投資家がベンチャー企業に対し、会社経営における事前承認や通知、取締役指名権、さらに取締役会に自社役職員を派遣する「オブザーベーション・ライト/オブザーバー・ライト」などを要求することもあります。

投資契約における注意点

最も多いのはExitの際のトラブルで、IPO(株式上場)を予定通り実現できなかった場合や、契約や法令に違反したとして、株式の買取を要求されるケースがあります。また、M&A(買収)の際に投資家への配分が優先され創業株主の取り分が少なくなったり、契約内容によっては他の投資家からの追加投資を受けられないなど、制約に縛られてしまうこともありえるので、注意が必要です。

株主間契約とは

「投資契約」と並んで、ほとんどの会社で締結されるのが「株主間契約」です。これは、投資契約が主に出資前の条件を定めた契約であるのに対し、出資後の権利や義務について、投資家とベンチャー企業、創業株主の三者間で締結される契約です。株主間協定と呼ばれることもあります。
ベンチャー企業は資金調達の段階では、投資家の数が限られています。そのため、投資契約に出資後の条件を特約として組み込んでしまうことが多いのですが、事業が成長して投資家の数が増えるに従い、特約が複雑化してしまいます。その結果、ある投資家との契約を履行することで、別の投資家との契約に不履行が発生するなど、トラブルが発生する原因ともなります。そこで、昨今では多くの企業が出資後の契約を株主間契約として一本化し、既存投資家から新規の投資家まで、広範囲に一律の契約を当てはめるようにしています。

株主間契約の内容

株主間契約の内容は三者間で自由に決められますが、多くの場合はExitに際して投資家の受ける権利や、会社経営に関する事項、情報開示に関する条件などが記載されます。

● 投資家の事前承認が必要な重要事項
● 決算内容や損益計算表など情報開示の範囲
● 先買権の条件
● 取締役退任における売渡強制条項
● 取締役指名権およびオブザベーション・ライトについて
● 共同売却請求権・強制売却権(共同売渡請求権)
● Exit(株式公開)へ向けた努力義務
● IPO実現時などの株式譲渡制限
● 新規株主との契約に関する条件 など

株主間契約の注意点

株主間契約書のうち、特に注意したいのがExitに関する条件です。Exitが予定通り実現できなかった場合や、投資家の一定割合以上がM&AによるExitを望んだ場合、たとえ経営者がIPOを目指していたとしても、多数株を保持する株主の意思によって、強制的に株式を売却(強制売却請求権/ドラッグ・アロング条項)されてしまうことがあります。
契約を締結する際にはあらゆる条項について、現実のオペレーション上対応可能かどうか、フェアな取り決めであるかどうか、そして望んだ形での会社経営が目指せるかどうか、法律の専門家とともにじっくり見直しすることが肝心です。

財産分配契約とは

「財産分配契約」は、「買収にかかる株主分配等に関する合意書」や、「株主間における合意書」など、様々な名称で呼ばれることもあります。条件として種類株式に「優先分配」を設定している場合に用いられ、株主間契約の中の「みなし清算条項」や「同時売却請求権」という、M&Aによって経営支配権が変更されるExitに関する条項を抜き出した契約です。
株主間契約に含まれる場合も多いですが、日本でも従来人気の高かったIPOに加え、M&Aも主流になったことで、財産分配契約を独立させた形で設けるケースが、今後増加していくと予測されます。
特徴としては、投資契約や株主間契約が投資家、創業株主、ベンチャー企業の三者間であるのに対し、財産分配契約では投資家の部分が「全株主」になることです。これにはエンジェル(個人)投資家や社員の株主も含まれます。

財産分配契約の内容

財産分配契約の内容は、主に「みなし清算条項」と「強制売却請求権/ドラッグ・アロング条項」に分けられます。以下にそれぞれの内容を記載します。

■みなし清算条項

ベンチャー企業がM&AでExitを実行するにあたり、企業を清算したものとみなして投資家に株式の分配を行う内容を定めたもので、これを実行するには種類株式に「優先分配」を設定している必要があります。そもそも優先分配は、ベンチャー企業が株式の配当を行う際や事業停止により清算を行う場合の決まり事で、株式譲渡であるM&Aには条件が該当しません。そのため、予め経営権が変更されるM&Aの際に会社を清算したとみなして、優先的に投資家へ株式を分配する規定を設定します。

■強制売却請求権/ドラッグ・アロング条項

「同時売却請求権」などと呼ばれ、多数の投資家からの賛成を得るなど一定の条件を満たした場合、ベンチャー企業や創業株主だけでなく、全ての株主に対してM&Aを受け入れることを請求できる権利です。

財産分配契約の注意点

「財産分配契約」は、事前にM&A発生の際の諸条件について合意を得ておくことで、Exitを円滑に行えるメリットがあります。ただし、「強制売却請求権/ドラッグ・アロング条項」に関しては慎重に検討することをおすすめします。
株主の意見が対立して方針が決定できない場合、それを解決する手段が強制売却請求権/ドラッグ・アロング条項ですが、最多持株の投資家が独断でこの権利を行使してM&Aを強行してしまうと、企業の現場への影響が懸念されます。それらを防ぐには、創業株主の拒否権や取締役会決議を行使条件として盛り込む、権利を行使できる条件を厳密に設定しておく、などの事前策が有効です。

業務提携契約とは

CVCなどで多く導入されるのが「業務提携契約」です。企業間における技術や生産、共同研究開発、販売ルートなど、お互いの得意分野を共用、または業務の一部を他社に委託する際に取り交わされる契約で、出資を伴わない提携においても行われます。
業務提携契約を取り交わすと、お互いのリソースを共用できるため、出資側には新しい技術の獲得、ベンチャー企業側にも大企業のスケールメリットを有効活用できるなど、双方にとってのシナジー効果が期待できます。ただし、企業間で情報開示する部分が多いため、提携によって取得した機密の取り扱いや、提携によって得られた成果物の権利など、厳密なルールを作っておく必要があります。

業務提携契約の内容

業務提携契約は、提携する企業の業種などで契約内容が変わります。業務提携契約の際に多く取り交わされる、ベーシックな項目についてピックアップしてみました。

● 提携の目的やコンセプト
● 提携する業務の範囲と内容
● 収益分配のルール
● 支配権の変更時の対応
● 成果物の権利
● 知的財産権の帰属
● 契約期間(終了日、更改の有無、解除などの条件)
● 秘密保持について(情報管理)
● 契約違反発生時の対応
● 権利や義務の譲渡、質入の禁止 など

業務提携契約の注意点

契約書を締結する際には、提携の目的やコンセプトはきちんと理解した上で、適切な内容を規定するようにし、内容について両者の認識に齟齬がないようにすることが重要です。
十分に内容を詰められていない場合には、大枠を業務提携契約書内で定め、詳細については、別途個別契約で定めることとすることも考えられます。
細かい条件等は、弁護士のチェックを受け、不備のないように進めましょう。

 

まとめ

投資条件設計の複雑化により、複数を取り交わすことが一般的となった投資に付随する契約書ですが、ベンチャー企業の資金調達においては、投資家から契約条件を提示される事が大半です。内容をしっかりと把握・理解し、自社が不利益を被らないように契約交渉を行うことが重要です。

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