凸版印刷は新事業・新市場の創出のため、2016年7月から現在までに国内外50社強のスタートアップ企業へ出資・提携をしてきました。その中で、スタートアップ企業と凸版印刷の橋渡しをするのがTOPPAN CVCです。シリーズ「TOPPAN talk」は、そんなTOPPAN CVCのメンバーに話を聞いていきます。
今回話を聞いたのは、新卒で凸版印刷に入社し、15年以上の経験を経てTOPPAN CVCに移籍してきた牧野と菅野。異動して約1年になる2人は「全社ベースの思考に切り替わった」と、CVCで働く印象を語ります。
2人に、TOPPAN CVCでの働き方等について、聞きました。
CVCでは仕事の捉え方を変える
── 牧野さんと菅野さんは新卒で凸版印刷へ入社。各部署で働いた後、CVCに異動しています。まずはお二人の経歴を簡単に教えて下さい。
牧野:
牧野です。よろしくお願いします。2005年新卒で入社しました。CVCに配属される前はメーカーや流通企業のマーケティングを支援する部署で、長く営業・プランナーとして働いていました。
牧野 理香|Rika Makino 大学を卒業後、2005年に凸版印刷に入社。情報コミュニケーション事業本部で営業・プランナーとして従事し、化粧品や飲料業界などのマーケティングプロモーションを支援。現在はTOPPAN CVCで、スタートアップとの資本業務提携及び事業開発を推進。さとなおラボ10期生。グロービス経営大学院2022年卒業。
菅野:
菅野です。凸版印刷には2007年に入社しています。新卒で配属された部署は出版社、新聞社、ゲームなどのコンテンツ制作をしている企業がお客さまの部署です。営業として入社し、企画などを経て2022年4月にCVCに手を上げて異動してきました。
菅野 清太郎|Kanno Seitaro 大学を卒業後、2007年に凸版印刷に入社。出版社業界を中心に営業として従事。企画・事業開発部門への異動後、コンテンツコラボ・広告企画・美術展の展示や広報の企画・AI/VRを活用したサービス開発等を経験。2021年にTOPPAN CVCへ異動し、資本業務提携による事業開発を推進。担当先は、Wovn Technologies、The Chain Museum、AWL、Symmetry Dimentions、Pixie Dust Technologies、AVITA等。
── 異動は手を上げてだったんですね。異動前のTOPPAN CVCの印象を教えて下さい。
菅野:
凸版印刷は年に一度、中長期的なキャリア形成を自己申告できるんです。それで年度の変わり目である2021年4月からCVCに異動してきました。
牧野:
私もです。CVCは会社として新しい事業領域や分野にチャレンジしている部署ということで、興味をもちました。
菅野:
私は前の部署で、元々TOPPAN CVCと一緒に仕事をしていたんです。CVCは基本的に、各部署との協業を前提としてスタートアップに出資します。当時私は連携事業部のカウンターパートとして、アートのECやコミュニティ運営をする「ArtSticker」を開発しているThe Chain Museumとの協業を担当していました。
他にも、新しい投資先候補に関してCVCとディスカッションしたり、逆に投資を検討したいスタートアップをCVCに相談したりしたこともあります。
牧野:
私は一緒に仕事はしていませんでしたが、同じ部署でCVCとやり取りをしていたので知っていました。成長分野からバックキャスティングで凸版印刷が取り組むべき事業領域を導いている思考が新鮮で印象に残っています。
── ちなみに以前の記事で「中途入社で会社の全体を掴むことに時間がかかる」と佐藤さん・滝本さんがお話していました。お二人は新卒からずっと凸版印刷にいるので把握しているものなのでしょうか。
参考記事:「裁量と多様性が協業の可能性を広げる。外部出身者が語るCVCの働き方」
牧野:
中途入社じゃなくても凸版印刷全体の把握は難しいです(笑)。扱っている領域がかなり広いですからね。自分が担当していた領域は会社の中でもほんの一部分だったんだなと、今振り返れば思います。
菅野:
自分以外の部署の方とは面識は多くないですからね。どの領域でどんな仕事をしていて、これからどこを目指しているのかは、協業案を組成する上では当然知っておかなければならないので、改めてインプットしました。
── 以前の部署とCVCでは働く上での考え方は異なるものですか?
菅野:
私は異動前の情報コミュニケーション事業本部では、出版社、新聞社、ゲーム業界のコンテンツに関する事業開発をしていました。TOPPAN CVCでも事業開発をやっているわけですが、ただ凸版印刷全体の事業開発をしているという点は異なります。
今は特定の業界だけの仕事をするわけではないですし、むしろ凸版印刷が今扱っていない領域の社会課題も考えなければなりません。なので今はすっかり全社ベースの思考に切り替わりました。色んな領域にアンテナを張らなくてはいけないという意味では大変ですね。
牧野:
元々私はクライントワークとして、営業と企画を担当していました。そのためこれまではクライアントの課題解決を通して社会に価値を還元してきたんです。それがいつからか、自分の会社を起点にして事業開発をしたいという気持ちが芽生えてきました。
また今まで自社だけではなく、色んなパートナー企業と協力しながら仕事をしてきたことが私の強みにもなっています。なのでスタートアップと一緒になって新たな課題を解決していくというTOPPAN CVCのスタイルは、今後のキャリアを考えてもいい選択だったと思います。
菅野:
私も牧野さんも、事業開発に興味があり、異動希望しました。TOPPAN CVCの中には投資に興味があって入ってきた人もいますし、まちまちですね。
牧野:
確かに「投資は事業開発の手段」ではありますが、私たちはその傾向は強いかもしれませんね。
個人ごとに違う、スタートアップとの協業の考え方
── オープンイノベーションの話題では、CVCや新規事業開発部署はスタートアップとの協業に乗り気でも、各部署はそうではないという話も一般的に聞きます。凸版印刷はいかがでしょうか。
牧野:
え、そうなんですか。むしろ逆の印象です。そもそも会社として積極的に新しいことに取り組む雰囲気があるので、新しいことには皆さん興味をもっています。新しいチャレンジが既存のお客さまの成長に寄与することもありますし、スタートアップとの取り組みにネガティブな印象は前の部署時代からありませんね。
菅野:
CVCの活動開始当初は前向きでない反応もあったそうです。特に新たな技術や、SaaSなどの新しいビジネスモデルの会社へ投資・協業のコミットメントを得ることは簡単ではなかったと聞いています。CVC創設時のメンバーを中心に、各部署への丁寧な説明や投資実績を重ねた結果、社内理解が進み現在のような雰囲気になりました。(創設ストーリー)
また、スタートアップ企業の素晴らしい経営者やプロダクトの魅力も大きく、最近は、「こんなスタートアップがいますよ」という話をすると「そんな会社があるんだ、すごいね!」といった反応のほうが多いですね。ビックリしながらも興味をもってくれます。
牧野:
もともとクライアントやパートナー企業の皆様と一緒に成長し多角化してきた会社ですから、社外の方々と共創することに慣れ親しんでいるんじゃないかと思います。
── なるほど。お二人はCVCではどんなお仕事を担当されているのでしょうか。
菅野:
私達というよりは、CVCチームの人たちは、基本的にみんな同じ仕事をしています。投資先を探して、協業案を企画して、出資して、協業する。これが基本パターンですね。
菅野:
それに加えて自分オリジナルの仕事がいくつかあります。先程、他の部署のことは把握できていないことも多いと言いましたが、とは言っても私は他のメンバーよりは社内で色んな仕事をしてきました。その経験を生かして各部署と必要な情報の連携を行っています。
具体的には、関係性の深い部署と定期的にミーティングを設けて、どういう領域でどんな仕事をし、今何に困っているのか、どんなビジョンを描いていて、今後どのようなアクションが必要なのか、その上でスタートアップとどんな取り組みが必要なのかをヒアリングしています。
── TOPPAN CVCに参画されて約1年になります。働く前と今で、CVCに対するギャップがあれば教えて下さい。
牧野:
まず、前の部署からみるとCVCは本社なので固いイメージもあったのですが、そうでもありませんでしたね(笑)。
菅野:
そうかもしれません(笑)。また、わかっていたことではありますが、投資という業務の性質上、企業価値の算定や契約書等の知識は必須です。当然自分でも勉強しますが、周りの方々に教えてもらいながら対応しています。
CVCだけでなく、(CVCが所属する)事業開発本部は新しいことに取り組む部署なので、知見のないことにも取り組まなければなりません。だから成果を出すためには努力が必要で、努力しなければ組織の成長に追いつけないとは感じます。そういう意味で、自分を高めようとする意識は大事かもしれません。
牧野:
TOPPAN CVCの印象という意味では、みんな自由に仕事をしていて刺激的ですね。働き方そのものの自由度が高いということもありますが、各人が色んな角度からスタートアップを探しているのが面白い。
私は社会課題の解決をしているスタートアップに興味を抱くことが多いのですが、他の方は別の視点でスタートアップとの協業を模索しています。自分の観点で仕事をしなくてはならないという意味では難しさもありますが、自由に働ける面白さもありますね。
ビジョンを掲げて邁進する起業家との仕事
── TOPPAN CVCでは当然、スタートアップとも一緒に仕事をします。感想を教えて下さい。
菅野:
「スピードが早い」ということは聞いていましたし、わかっていたつもりだったのですが、想像の何倍も早いです。元々の部署で新しいことをするときは、アポを取ってミーティングをして会食で親睦を深めて社内で検討して先方と擦り合わせて稟議を承認してもらって……というプロセスを時間をかけて行う場合もありました。しかしスタートアップとはSlackで連絡してすぐに「じゃあ進めましょう」となることも多い。最初は面食らいました。
牧野:
CVCにきてスタートアップの経営者の方々とやり取りする機会が増えましたが、やはり尊敬できる方が多いですよね。自分で起業してビジョンを掲げて新しいことにチャレンジしていく。今まであまり接したことがない方々なので新鮮です。
またTOPPAN CVCの中の数人は、単に投資しているだけでなく、まるで投資先のスタートアップ企業の一員として働いているような人もいます。私もその一人で、まだ短い期間ですが、実際に共同して動くことでわかることもありましたし、仕事のやりがいも感じました。投資先のことがよりわかるという意味で、チャレンジしてみてよかったですね。
── スタートアップ企業と凸版印刷で事業開発するためには、各部署も巻き込んでいかなければなりません。どんな意識で取り組んでいますか?
牧野:
あくまで事業を担当する部署がやりたいことを尊重することが大事です。自分がやりたいことを提案するだけではなく、各部署が何を実現したいのか。それをしっかり考えることを意識しています。いえ、意識するように頑張っています(笑)。
牧野:
その上で私の役割は、スタートアップ企業・凸版印刷の目線を引き上げることだと考えています。そのために新しい領域にチャレンジしていきたいですね。
菅野:
我々の仕事は簡単に言うと、スタートアップ企業を各部署に紹介して連携の企画を立てることです。こういう点がすごい。こんなことができたら社会的な価値がある。それを論理立てて説明できるのが理想です。
社内各部署との連携が重要ですので、現在協業をご一緒いただいている部署との更なる連携はもちろん、社内の方でこの記事やHPを見て、出資先企業との協業に興味を持ってもらえたらぜひ声をかけていただきたいです。
新たな会社への投資や協業についても、より多くの部署とご一緒したいので、お互いに相談しあえるようにしていきたいです。
── 最後に、TOPPAN CVCに興味をもって、この記事を見ている社内外の方にメッセージをお願いします。
牧野:
スタートアップはじめ社内外の方々と協力し、時にはぶつかり合いながらも一緒に事業を作り上げていく、とてもやり甲斐のある仕事だと感じています。
菅野:
私たちは、スタートアップ企業様との協業による新事業開発をミッションとしています。世の中の課題に対して、解決策や価値を提供する事業を作りたいという想いを持っていて、動き方・手段に迷っている人は多いのではないでしょうか。TOPPAN CVCでなら、その想いを具現化するアクションができると思います。ぜひ、興味がある方はお気軽にお声掛けください。
(取材・執筆:pilot boat 納富隼平、撮影:ソネカワアキコ)